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第十二章・5
「亜希……」
「ごめんなさい。待ちましたか?」
「いや、別に……」
「どうかしましたか?」
啓は、亜希から目を離せなくなっていた。
髪を整え、ドレスアップし、精いっぱい背伸びしている亜希。
そんな彼が無性に愛しく、心に飛び込んできた。
「がんばって、お洒落してきたんだな」
「解ってくれますか!?」
「良いよ。とても似合う」
「ありがとうございます!」
その笑顔も、啓の目には眩しく映る。
黄昏時に、周囲は暗くなっている。
そんな中、降り注ぐ光のように、亜希は存在している。
思わず啓は、片腕を彼に差し出していた。
「では、行こうか」
「はい」
亜希は、啓の腕に手を軽く乗せた。
大切に、腕を組んだ。
二つの影は一つに重なり、華やかな夜の幕開けになった。
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