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第十四章 悪巧み
「ん~ん~、んんっ、ん~、う~」
利実は、でたらめな鼻歌を歌いながら、スマホの画面をいじっていた。
ここは、星の付いた高級ホテル。
そのスウィートルームに、彼はいた。
「あ~あ。つまんない動画」
隣には、だらしなく口を開けていびきをかく慎也が寝ている。
その姿をちらりと見て、利実は溜息をついた。
「慎也さんにも、飽きちゃったな」
再びスマホを操作し、画面に写真を映す。
そこには、凛々しい顔つきの啓がいた。
利実の脳裏に、怒りをあらわにした啓の声が甦った。
『二度と、こんな真似をしないでくれ!』
「カッコよかったぁ。あの時の、啓さん」
思い出すと、ぞくぞくする利実だ。
「でも、声だけだったもんね」
あんな風に怒鳴る時の、彼の顔を見てみたい。
いつもクールな表情が壊れた時の、彼の顔を見てみたい。
「やだ、僕ったら。もしかして、ドS?」
啓の取り乱した様を、見たい。
ただそれだけの、幼稚な願いのために、利実は再び悪だくみを始めた。
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