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第十四章・2
「慎也さん。ミルク、要る?」
「うん。砂糖も取って」
ホテルのカフェで、慎也はコーヒーにミルクと砂糖をたっぷり入れた。
しかし……。
「利実。俺に、何かおねだりがある?」
「何で解ったの」
「利実が自分からミルク寄こしてくれるなんて、珍しいから」
「あるよ。おねだり」
何でも言えよ、と慎也は懐の深い自分を見せようとした。
(そういうところが、所詮ただの成金なんだよね)
内心の溜息を洩らさないようにしながら、利実は身を乗り出した。
「慎也さん、ってさぁ。お友達、多いよね?」
「ん? ああ、芸術サロンの友人がいるよ」
「そのお友達、何人か呼べない? 一緒に遊びたいんだけど」
いいけど、と慎也は怪訝そうな顔つきだ。
そこで利実は、亜希の名を出した。
「僕の方からも、友達を呼ぶから。亜希くん、って言うんだけど」
「合コン? その子、可愛い?」
「とっても可愛いよ。僕には負けるけど」
利実らしいな、と慎也は笑った。
「何して遊ぶの。どっか、行く?」
それはね、と利実の目は怪しく光った。
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