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第十五章・5
「何、考えてるのさ! 犯罪だよ、これ!」
声を荒げる利実に、慎也は涼しい顔だ。
「お前が黙っててくれれば、OKじゃん」
「慎也さん!?」
「それに、亜希くん。後で100万円あげるから。だから、秘密だよ?」
亜希は、ぞっとした。
10万円で、客に中出しを許した過去を、思い出したのだ。
辛かった、悲しかった、苦しかった。
啓のおかげで、ようやくその心の傷が癒えたというのに。
「この、外道!」
利実が罵ったが、慎也はまるで平気だ。
「ま、終わるまでそこで見てな。亜希くんの次に、利実も可愛がってやるから」
へらへらと慎也に併せて笑う男どもは皆、それなりの財力を持つ家の出だ。
良い所の、お坊ちゃんたちだ。
そんな男たちの醜悪な一面を、利実は思い知らされた。
「こ、こいつら……ッ」
利実が黙ってしまったのをいいことに、慎也は再び亜希に挑みかかろうとしている。
(啓さん、遅いよ! 何してるの!)
利実の計画では、亜希を素裸に剥いて辱めを受けさせるだけだった。
そこに啓が駆けつけて、取り乱す。
(僕はただ、啓さんの激情を感じたかっただけなのに!)
あまりにも危うい遊びに、火を点けてしまった。
啓は、まだ来ない。
利実は、焦っていた。
亜希は、絶望していた。
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