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第十六章・2
利実の厳しい声は、ただれた空気を引き裂いた。
男たちは、反射的に彼の方を振り向いた。
振り向いて、ぎょっとした。
銃口が、こちらを向いていたのだ。
「ゆっくり、亜希くんから離れて」
利実は手のひらサイズの銃を、構えている。
恐る恐る亜希から離れながらも、慎也は疑惑を口にした。
「利実。偽物だろ? それ。モデルガンか、何かだろ?」
「王子家を甘く見ないでね。護身用の銃も持たずに、僕が一人で歩いてるとでも?」
銃規制の厳しさは、世界でもトップクラスのこの国だ。
いくら名家の子息でも、そこまでは……。
そんな男たちの考えを、利実は砕いていった。
「地下の射撃訓練場で、しっかり練習もしてるんだから」
そこで利実は、にやりと笑った。
「一度、本物の人間を、的にしてみたいって思ってたんだよね」
この言葉には、慎也は震え上がった。
彼なら、やりかねないからだ。
「おい、行くぞ」
慎也の逃げ腰に、男たちは亜希から手を離した。
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