88 / 146
第十六章・3
最後尾の男がマンションから出ていくまで、利実は警戒を緩めなかった。
全員がエレベーターに乗ったことを確認し、部屋の内側からしっかりとロックを掛ける。
そして、ばたばたと亜希に駆け寄った。
「亜希くん!」
歯がカチカチと鳴り、指が震える。
蒼白になり、利実は素裸で転がったままの亜希を揺さぶった。
「ごめんね、亜希くん。ホントに、ごめん。大丈夫? 動ける?」
「利実さん……」
「もう、大丈夫だから。あいつら皆、いなくなったから!」
利実は亜希を抱きかかえ、起こした。
「温かい、シャワーを」
「はい……」
そのまま亜希をシャワールームに連れて行き、利実は彼を清めた。
湯でずぶ濡れになりながらも、亜希の体を優しく洗った。
ともだちにシェアしよう!