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第十六章・5
「亜希は!?」
息せき切って現れた、啓。
髪を乱し、病院のユニフォームのままで駆け付けた、乱れた姿。
あれほど見たがっていた啓のうろたえた表情なのに、今の利実には痛々しかった。
「今、眠ったところ」
「利実くん、何があったんだ!?」
「ごめんなさい。本当に……、ホントに、ごめんなさい……!」
利実は、事の次第を正直に打ち明けた。
啓のクールな仮面をはがし、生々しいその素顔を見るために。
そんな幼稚な願望のためだけに、亜希を危険にさらしてしまったことを。
「利美くん、君って人は……!」
「ごめんなさい……」
利実の声は、どんどん小さく弱弱しくなっていく。
その時、啓の手首がそっと握られた。
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