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第十八章・5
「亜希。君との契約は、打ち切るよ。愛人契約は、解消だ」
「はい」
やはり、と亜希は思った。
こみ上げてくる涙がこぼれないように、舌先を噛んで我慢した。
「これからは、愛人ではなく。亜希を婚約者として扱いたいんだが、どうだろう」
「えっ?」
そこで啓は体を動かし、亜希の方を向いた。
「君と一緒にいると、とても安らぐんだ。楽しいんだ。日々が、充実しているんだ」
「啓さん……」
「よかったら、将来パートナーとして、共に歩んで欲しい」
「……」
亜希は、胸がいっぱいになった。
こみ上げてくる涙は、歓喜のものに変わった。
「僕。僕は、何の取柄もない、オメガで……」
「そんなことはない。君は私に、これまでたくさんの贈り物をくれたよ」
そっと、啓の手が差し伸べられた。
亜希は、その手をしっかりと握った。
「啓さん……!」
「ありがとう、亜希」
二人は、強く抱き合った。
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