103 / 146
第十八章・6
亜希と口づけながら、啓の脳裏には利実の声で文句が響いていた。
『大切なプロポーズを、ベッドの中で横になってするなんて!』
確かにな、と啓は苦笑いだ。
だが、これもまた彼にとっては大事な儀式だった。
「亜希。君を抱いても、平気か?」
「はい。大丈夫だと、思います……」
恐怖の一夜から、啓は亜希との情事は控えていた。
思い出すと、彼が苦しむからだ。
しかし、今なら。
二人の胸に喜びが満ちている今なら、うまく行くかもしれない。
啓は亜希とキスをしながら、そのパジャマのボタンに指をかけた。
愛人から婚約者となった愛しい人の肌に、触れた。
ともだちにシェアしよう!