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第二十一章 模索と焦りとひらめきと

 啓は、困り果てていた。  亜希の病名が、定まらないのだ。 「狭心症だと思っていたが……」  それが、これまで診てきた症例とは異なっている。  未知の部分が、多すぎるのだ。  一番ネックになっているのは、亜希の心臓を動かしている、心筋。  その心筋に、充分な量の酸素や栄養分を運ぶのに必要なのが、冠動脈だが。 「亜希の冠動脈は、細すぎる」  通常の狭心症であれば、治療法はある。  薬物療法から始まり、カテーテル治療、冠動脈バイパス術などの手術だ。  さらに、心臓そのものを移植する、という手段もある。  しかし亜希の冠動脈は、啓の言うようにとても細く、カテーテルやバイパス手術、心臓移植に耐えられそうにもなかった。 「先天性心疾患、と位置付けるものなのか……」  啓は交流のある心臓血管外科の医師たちに助言を求めたが、芳しい回答は得られなかった。

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