121 / 146
第二十一章・6
啓は亜希のための調べものを一旦やめて、デスクを離れた。
頭を抱えて考え込んでいても、仕方がない。
まずは、亜希の顔を見よう。
(そして、容体を把握するんだ)
長く清潔な回廊を歩きながら、啓は少しでも前向きになろうとしていた。
心の隅に頭をもたげてきた恐怖と、戦っていた。
その恐怖とは。
(亜希は、あとどのくらい持つんだ? あとどのくらい生きられるんだ?)
知らず知らずのうちに、亜希の余命を計算に入れるようになってきた自分が、ここにいる。
振り払っても振り払ってもぬぐえない、恐怖。
いつしか表情も、険しくなってしまう。
亜希の病室に入る前に、啓は無理に笑顔を作った。
そしてドアをノックし、入室した。
ともだちにシェアしよう!