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第二十一章・7
「亜希。気分は……」
「あれ? 啓さん。お邪魔してまーす」
「利実くん……?」
病室内には亜希だけでなく、なぜか利実の姿がある。
お見舞いに来たのだ、と彼は笑顔だ。
そして、もりもりとリンゴを食べながら、利実は画用紙を啓にひらひらさせた。
「見て! これ、亜希くんが描いたの。すっごく上手!」
亜希は、恥ずかしそうに微笑んでいる。
「利実さん、啓さんに見せないでください。もう少し上手になってから」
和気あいあいとした雰囲気の病室で、啓だけがふと考え込んだ。
(待てよ。利実くん……、亜希……)
啓の頭に、ひらめきが走った。
「利実くん。王子病院では、確かiPS細胞を扱っていたね?」
「そうだけど」
亜希、と啓は彼の手を握った。
「助かるぞ、亜希。君は必ず、私が救ってみせる!」
啓の目の前には、亜希の未来への道が開けていた。
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