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第二十二章 過酷な条件
iPS細胞から作製した心筋細胞シートを、亜希の心臓表面に移植する。
これが、啓の思いついた治療法だった。
啓は、亜希に対してようやく、彼の抱える疾病とその治療について打ち明けた。
「iPS細胞は、知っているね?」
「万能細胞、ですよね」
「そう。今回は、心筋細胞を大量に作成してシート状にし、それを亜希に移植しようと思う」
ただ……。
「ただ、この治療法はまだ一般化されていない。治験、という形で行われるんだ」
国内でわずかしか発表されていない、心筋細胞シートを使った移植手術。
幸いどの患者も、経過は良好だ。
しかし、亜希は第二性がオメガ。
体力が常人より劣ると言われるオメガへの移植手術は、亜希が初めてとなる。
そして啓も、その手術はまだやったことが無い。
この病院での事例も、無い。
無いない尽くしの挑戦だった。
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