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第二十二章・3
成功させて見せる。
必ず!
啓は確固たる思いを胸に、亜希のカルテと術式の資料を手に、院長室へ赴いた。
院長は、啓の父親。
彼が、最も苦手とする人間だった。
ドアをノックし入室すると、父はすでに応接室にいた。
「iPS細胞を使いたいんだって?」
「はい」
「うちには、そんなものは無いが」
「王子病院さんに、協力を依頼しようと思っています」
うむ、と啓の父は資料やカルテに目を通した。
「患者はオメガか。やめておけ。リスクが大きい」
治験に成功すればこの病院の名声につながるが、逆に失敗すれば信用が落ちる。
父は、失敗を恐れていた。
しかし、啓は食い下がった。
「私が、必ず成功させて見せます。必ず!」
父は、驚いた。
幼い頃から、従順な良い子だった、啓。
その彼が、我を通そうと言うのか?
しばし考えたのち、父は口を開いた。
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