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第二十二章・4

「いいだろう。だが、条件がある」 「条件、ですか?」 「これを機に、王子さんの御子息と結婚しなさい」 「え!?」  啓と利実の婚約が、白紙に戻されたことは知っている父だ。  しかし、彼はまだ諦めてはいなかった。  胸の内で、保留という形で残っていた。 「王子病院さんの協力を求めるのならば、利実くんと結婚するんだ」  手術が成功し、患者が健康になれば、今後この病院でiPS細胞を使った治療を続けられる。  その際に、王子病院と縁続きになっていれば、何かと便利で得なのだ。  合理的な父らしい、ものの考え方だった。  啓の返答を待たずに、厳しく言った。 「でなければ、この手術は許さん」  後はすぐに立ち上がり、応接室から出て行ってしまった。  有無を言わさぬ、院長の背中だった。

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