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第二十二章・5
啓は自分に与えられた研究室にこもり、頭を抱えていた。
抱えながらも、心は一方向を向いていた。
「亜希を、救いたい」
そのためには、何だってやる。
そう、決めたじゃないか。
こうしている間にも、彼の体は弱ってゆく。
その未来の扉が、閉ざされて行ってゆく。
ぎゅっとこぶしを握り、啓は私用の携帯を手にした。
操作し、相手が通話を繋ぐのを、待った。
それは、利実だった。
「もしもし。利実くん、今いいかな?」
『啓さん? 何、改まって』
「よかったら、今夜会えないか。夕食を、一緒に」
『いいけど? 場所は、どこ?』
待ち合わせの場所と時刻を決め、啓は通話を終えた。
そしてうなだれ、大きな溜息をついた。
「……亜希のためだ」
悲しく、辛い道に、一歩踏み出そうとしていた。
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