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第二十三章・5

 啓は、落ち着きを取り戻していた。  焦りが消え、周囲が見えてきた。 「で? まだ僕と結婚したい?」 「いや。私が間違っていたよ」  亜希を救うため、利実と結婚する。  そんな茶番は、許されない。  根本的な解決を目指すため、啓は父と対峙することを決意した。 「利実くん、本当にすまない」 「指輪は、ちゃんと亜希くんに渡してね」 「ありがとう」 「いいってことよ!」  明るい利実の声に背を押され、啓は離席した。  行く先は、実家。  厳格な父に、生まれて初めて歯向かいに、啓は向かった。 「あ~あ。チャンスを棒に振っちゃった」  残された利実は、ワインをがぶがぶ飲みながら、ふてくされた。 「これが啓さんと結ばれる、ラストチャンスだったのに」  でも、悪くない気分だ。   利実は、亜希のことも大好きなのだから。 「一番のハッピーエンドは、あの二人が無事に一緒になることだもんね」  僕も、早く素敵な人を見つけよう!  そんな自分に、自分で乾杯していた。  啓と亜希の二人に向けて、乾杯していた。

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