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第二十四章・4
何て澄んだ、きれいな目をしている少年だ。
初見で啓の父は、亜希をそう感じた。
(しかし、これほど幼いとは)
カルテには、18歳とある。
だが、亜希の体躯は小さく、15歳程度といっても過言ではない。
(こんなに小さな患者の心臓に、心筋細胞シートを移植するのか)
難しい手術になる、と父は考えた。
さらに、後ほど啓のパートナーになるかもしれない相手、としても亜希を見た。
(跡継ぎが、産めるのか?)
まだ10代なら、成長の伸びしろは残っているだろうが、やや不安だ。
難しい顔をして診察する父を、啓は傍でハラハラしながら見ていた。
そんな父が、ふとベッドサイドの収納ボックスに目をやった。
そこには、スケッチブックが置いてあった。
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