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第二十四章・6

「青葉くん」 「はい」  啓の父は、亜希に静かに語りかけた。 「君を救う手段として、当病院では初めての手術を行いたいと思う。同意してくれるかな?」  は、と啓は父を見た。 「お父様。それでは……」 「病院内では、院長と呼びなさい」  父は、深くうなずいた。 「青葉くんに、心筋細胞シートを移植しよう」  その言葉に、啓は父の前に踏み出して亜希の手を握った。 「亜希! 助かるぞ、君は!」 「啓さん。啓さん、ありがとうございます……!」  親の前でいちゃつく息子に、父は苦笑いだ。 「啓。急ぎスケジュールを立てるんだ。王子病院さんへの連絡は、私がとっておく」 「はい!」   ああ、これで。  これで、愛しい人を救える。  亜希を、救うことができる。  ああ、医者になって良かった!  啓は初めて、心からそう感じていた。

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