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第二十五章・2

 優秀なうえに謙虚だ、と周囲は啓に好印象を持った。  まるで芸能人のようにマスコミから騒がれ、病院にまでレポーターが集まるという始末だ。 「菱先生が来ると、業務の邪魔になります!」  他の医師や看護師たちから苦情が相次ぎ、啓はとうとう長期の有休を取ることになってしまった。  その啓は今、ラウンドフレームの眼鏡をかけて、ホテルのカフェにいる。  ここは、亜希と初めて出会った、思い出のカフェだ。  あの時と同じ席に、彼は掛けていた。 「お待たせしました! ……って、啓さん?」 「やあ、亜希。変装だよ、変装」 「すぐにばれそうな、変装ですよ?」  そうかな、と笑いながら、啓は眼鏡を外した。 「忙しいのに、無理を言ってすまないな。大学は、どう? 楽しいか?」 「はい。とっても充実してます」  健康を取り戻した亜希は、翌年に無事受験を済ませて、志望校に見事合格していた。  今では、念願の医大生だ。  亜希が注文した飲み物がテーブルに届いたころを見計らって、啓は彼の前に小箱を置いた。

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