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第二十五章・3

「これを、君に贈りたい」 「何でしょうか」  退院祝いに、合格祝い。  入学祝いまで、亜希は啓にもらっている。  これ以上、何かお祝いがあるだろうか? 「開けてみて。そしてできれば、着けて欲しい」  啓に促され、亜希はそっと小箱をほどいた。 「これは……!」  出て来たのは、美しいダイヤモンドの指輪だ。  亜希は思わず顔を上げ、啓を見た。  その彼は、優しく微笑みながらうなずいている。  亜希は、そろそろと中指にリングを通そうとした。  だが、その手を啓が、とどめた。 「亜希。着ける指が、違うよ」  そしてリングを受け取ると、彼自身の手で亜希の薬指にはめた。

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