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第二十五章・5
啓の手は亜希の手首を軽く取り、しばらく気配を読んでいた。
「うん。脈は乱れていないようだ」
「え?」
「心配ない。私は、医者だよ」
「あ、あの時の……」
亜希は、思い出していた。
初めて啓と会った時の、仕草。
そして、言葉だ。
それに気づいた亜希に啓は微笑み、続けた。
「しばらく、傍にいても? このまま別れるのは、少し心配だ」
「いいんですか?」
「待ち合わせをすっぽかされてね。時間はあるんだ」
二人は笑い合いながら、あの日あの時の再現をした。
そして啓は、笑いを収めた後に小さな声で、だが力強く言った。
「しばらく、なんて言わずに。一生、君の傍にいさせてくれ」
「……はい」
亜希の返事に、啓は朗らかな笑顔をよこした。
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