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第2話
白いベッドに白いカーテン。
白い白衣に真っ黒な髪の先生は、白い歯を覗かせていた。
蛍光灯が目に痛い。
「思い出したか。」
そう呟くと僕の心臓のあるところを、白いシーツの上からボールペンで突いた。
「っぐ。」
痛みで意識が飛びそうになる。
「そうさ。これは俺の仕業だよ。そう痛がるな。時期に傷跡すらも跡形もなく消えるだろう。」
口の端を釣り上げながら、先生は何度もボールペンの先で突いてくる。
その度に全身に痛みが走るが、どう言うわけか、突かれれば突かれるほど痛みが引いていくのが分かった。
「やはり若いと反応も早いな。いいサンプルが取れそうだ。」
そういうと、僕の体にかけてあったシーツを剥ぎ取り、ワイシャツのボタンに手をかけてくる。
「僕をどうするつもりなんですか。」
聞いたところで、己の未来は死だと分かっていても聞かざるを得なかった。
「どうもしないよ。」
楽しそうに呟きながら、ワイシャツのボタンを器用に片手で外していく。
僕は唯一動く右手で静止しようと試みるが、あっさり捻り上げられてしまう。
「痛っ」
「こらこら、俺だって君にこんな手荒な真似はしたく無いんだが。」
そう言い終わると、あっという間に僕の躰は蛍光灯の下に露わになる。
冷たい指先が僕の首筋をなぞらせながら、下に這っていく。
「っ!」
僕の躰は反射的に強張り、びくんと背筋に激流が走る。
「凄いな。もう塞がってる。」
先生は這わせていた人差し指を、僕の心臓の上で留めた。
僕は朦朧とする頭で、呼吸を整えようと試みたが、余計荒い息が保健室中に木霊した。
「おいおい。そんなに息を荒げるな。酸欠になるぞ。」
相変わらず口の端を引きつらせながら、彼は言った。
その奥から、尖った真っ白な歯を覗かせている。
「僕を殺すのでしょう?・・・早く楽に・・・してください。」
躰が痺れて力が入らない僕は、情けなくもこんな台詞しか出てこなかった。
抵抗できない僕は、殺される時を今か今かと待ち続ける他、術はない。
しかし、先生は驚いたように僕を見つめると、視線を逸らすことなくこう言った。
「殺す?なんの冗談だ?君は俺の息子に成ったのだから、殺す訳が無いだろう?」
今度は僕が目を見開く番だった。
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