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第9話

ぽかんと開けた口が塞がらないでいると、また口にクッキーを詰め込まれる。 不意の出来事で、ふたたび僕はむせ返る。 「ほら、もう少し食べなさい。」 強引に詰め込まれたそれをココアで押し流すと、僕は疑問を口にする。 「吸血鬼って普通の人と何が違うんですか?あと、僕はあなたの仲間に殺されるんですよね?」 太宰先生は、ふむと一言頷くとそこのサイドテーブルに頬杖をついた。 「君は案外質問が多いね。」 そう言って顎に手をかけると語り始める。 「君の知りたい事は、きっと吸血鬼社会の中にあると思うけど、時期にわかって来る事だから割愛して話すよ。 普通の人と違うのは、寿命が少し長い事と傷の治りが早い事。 殺されるかどうかでいえば、君はもう吸血鬼であり人間ではなくなってしまったから殺されない。」 僕はその言葉を聞いて安堵する。 しかし、先生は続けてこう言った。 「だけど、君の場合は吸血鬼への転身方法がまずかったな。いわゆる禁忌を犯した訳だから、近いうちに俺と一緒に元老院に出向いて貰うことになるよ。」 「禁忌?」 「そう。俺達吸血鬼も本来は人間と同じ生殖活動を行い、子を成すんだが、今回の君の場合は手術によるものだったからね。」 僕はごくんと生唾を飲んだ。 傷は塞がったものの、まだ完全に癒えているとは言い難く、心臓が脈打つたび重い痛みが走るのを感じていた。 特に両手で掴まれたような、なんとも形容し難い感覚が残っている。 「それと」 太宰先生は僕の顔をじっと見つめた。 「俺が同性愛者だという事は、絶対誰にも漏らすなよ。」 僕はびくっとしてすくみ上る。 ニタニタ笑うだけだった先生が、こちらを凝視していた。 「わかりました。」 マイノリティのバリアフリーが叫ばれている現代社会において、未だ差別が無くならない事を痛感する。 いやでも、盗撮はまずいだろ?という疑惑は飲み込む。 だけど、僕の好奇心が勝り、おずおずと聞き返した。 「もしバレたらどうなりますか?」 先生はこちらをじっと睨んだまま、口を開いた。 「俺が殺される。」

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