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第10話
「おはよー!」
朝、僕が教室に入ると、みゆきがパタパタと駆け寄ってきた。
「おはよ。」
僕はいつものように返事を返したけど、はっとした表情のみゆきが顔を覗き込んでくる。
「風邪治った??」
「ううん、まだ。」
心配そうなみゆきを他所に、サクサクとカバンの中身を取り出すと机の中につっこむ。
それから、聖書と賛美歌を取り出すとみゆきに告げた。
「礼拝遅れるよ。」
「ああっ、そうだね。一緒にいこっ。」
大礼拝堂に着くと、もう殆どの生徒が集まっていた。1500人という大人数を収容できるので、生徒達のざわめきも半端ではない。
僕はみゆきと一緒に壇上横の聖歌隊の列に並ぶ。
ふと気になって教員席に視線を向けると、いつもの姿の太宰先生がそこに並んで座っていた。
僕の視線に気づいたのか、ニタリと会釈してくる。
僕はぺこっと、頭だけ下げたのち、椅子に座った。
礼拝は、いつもと何ら変わりがなかった。
心配していた聖書も持てたし、牧師の話も普通に耳に入ってきたし、賛美歌だっていつもの声で歌えたのだ。
本当に何の変哲も無い朝だった。
吸血鬼になってしまったらしいから、何かが特別変わるかと思っていたけど、全くもってそんな事は無かった。
勉強もいつものようによく解らないし、記憶力も変わらない。
聴力も変わらない。
視力も全く変わってないし、日光だって全く平気。
食欲だっていつもと変わらないし、人の血を飲みたいだなんてまるで思わない。
唯一変わったと言えば体力で、むしろ血を抜かれた分、持久力がまるで無くなってしまった。
階段を登るだけで息切れするのは流石に辛い。
まだ僕は高校生なのに。
午前中は頑張って椅子に座って授業を受けたけど、お昼を迎えたら緊張も解けてしまい、体力的に限界だった。
午後の授業を机につっぷしたまま受けることも出来ないので、仕方なく保健室に足を向けた。
ガラガラとドアを開けると誰もいない白い室内が僕を出迎えた。
「ベッド貸してください」
それだけ言うと、僕はベッドに直行し横になる。
午前中気を張っていたせいか、お昼ご飯を食べてお腹がいっぱいになったせいか、直ぐに睡魔が襲ってきた。
暫く窓の外を眺めて微睡んでいた僕はそのまま眠りについてしまった。
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