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第11話
僕は揺り動かされて目を覚ました。
「起きなさい。君はまた俺に自宅まで送迎させる気なの?」
僕が見上げると、そこには呆れ顔の太宰先生が立っている。
「昨日は俺のせいだから、致し方なく送ったけれど、今日は電車で帰りなさいよ。」
「うぅ、今、何時・・・」
「6時」
「うわぁ・・・」
僕は大きく息を吐くと、寝ぼけ眼で考える。
保健室に来たのは1時過ぎだった。
流石に寝過ぎだよ、僕・・・。
「途中、女子生徒が君に会いに来たけど、具合が悪くて寝てるからと追い返しておいたよ。」
「すみません。」
「そう思うなら、明日は病院に行きなさいね。」
「えっ?」
言われて僕は思わず聞き返した。
ちょっと待って。
昨日は僕に病院に行くなと言いませんでしたか?
「なんでそんなに不思議がるの。」
「だって昨日、病院に行くなって・・・」
先生は思案顔でふむと頷くと、顎に右手を添えて言った。
「服を脱ぎなさい。」
「えっ」
「傷の具合を見るんだよ。」
「あ、はい。」
僕は警戒してしまった事を、少し恥じた。
上から順にボタンを外して行くと、少しづつ肌が露出してくる。
「胸の傷の具合は良いみたいだな。」
気づくと、太宰先生は僕のベッド脇に座り込み僕の心臓の辺りを指で撫ぜている。
確かめるようにじっと見つめてから、聴診器を当てる。
「心音も、悪く無いな」
そう言うと、問題があるはずの心臓から手が遠のき、何故か左肩に添えられる。
「問題はこっちの傷だ」
心配そうに僕を見つめ、左肩の辺りで冷たい先生の指が動く。
「吸血鬼は傷の治りが驚異的に早いのは君が一番体感していると思うが・・・」
そこまで言うと、先生は言葉を切った。
僕の首筋から肩の辺りにかけて、ゆっくりと上下に撫でていく。
「何故か牙に刺された傷だけは、人間も吸血鬼も治癒が遅くなる。」
申し訳なさそうな表情で続ける。
「特に今回は長く吸っていないといけないから、深く何度も突き刺した。青痣まで出来てしまったね。悪かった。」
それから、更に付け加えた。
「今日まで吸血鬼の伝承が残ってしまったのは、この傷跡が残ってしまってたせいなんだ。」
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