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第15話
誰も居ないガランとした講堂で、僕は先生と共に壇上に上がっていた。
暫くすると奥からひとりひとり、合計三人の男性が現れ、それぞれが各々の椅子に着席した。
その三人の誰もから、威厳や風格というのもを感じ取る。
僕は身震いした。
着席すると、三人はそれぞれの資料に目を通し始めた。
それからあれやこれやと三人でブツブツ話を始める。
僕はただ、じっと彼らを見つめる事しか出来なかった。
また暫くして、中央の男性が顔を上げる。
「君がその、我々の世界に途中から転身したという『森王子』くんかね?」
白髪で丸眼鏡をかけたその男性は、僕に尋ねた。
僕は、先ほど先生に言われた事を思い出す。
余計な事は言わない、しないが鉄則。
「はい。」
僕は返事をした。
だけど、その声は裏返ってしまい、変な音を立てる。
しかし、気にする風もなく中央の男性が続ける。
「そして君が、禁忌を犯した『太宰夏彦』君で間違いないね?」
「はい。」
先生はいつもの声音で、いつものように返事をする。
向かって左側の男性がふむと唸るのが聞こえる。
「まずいねぇ。これはまずいよ。太宰君。」
右側の白髪混じりの男性が続ける。
「資料によれば、君はその隣の子に禁忌5番を施したとあるじゃないか?君は禁忌を犯した者がどうなるか知らない訳では無かったろう?」
「存じております。」
「ううん」と尚一層低い声で左側の白髪を肩まで伸ばした男性は唸った。
「そうか。では君は死刑だ。異存は無いね?」
「ありません。」
僕は目を見開き、ばっと先生の方に振り向く。
そんなこと何も聞かされてない。
僕が口を開こうとすると、先生が掌でそれを制した。
一瞬僕に目配せした先生は、再び三人に向き直り口を開いた。
「ですが、恐れながら申し上げたい事が御座います。私はサンプル供給者の一人です。唯一のもう一人の供給者は、残念ながら老化により先日供給停止の通達を受けたと聞きました。つまり、現時点で供給者は私一人となります。」
先生はここで大きく息をつくと更に続けた。
「そこで私は特別措置法第43項を提案したいと思います。」
左側の男性がガンっと机を殴る。
「君は何を言っているのか分かっているのかね?」
青筋を立てたその男性は拳を握りしめ、こちらを睨みつけている。
右側の男性が「まぁまぁ」と宥めに入る。
中央の男性が口を開いた。
「中原殿の言いたい事もよく判る。しかし彼を失う事は我々としても大きな痛手であるのも事実だ。」
右側の男性が深く頷く。
左側の男性が唸った。
「そのような甘えが、我々を今日の窮地に追い込む事になったのでは無いか!何でもかんでも、何処の馬の骨とも知れぬ者を受け入れ、結果として血が薄くなってしまった!我々の誇りと信念はその程度の物だと言うのか!」
「それは誤りに他ならないねぇ。」
右側の男性が唸る。
「我々は、やれ規律だ法律だ、美徳だ風紀が乱れる等と排他的になり過ぎたのだよ。近親を繰り返した結果、健康であるものが減ってしまった。」
「そんな事はない!血が濃くなれば必ず次世代を担う強い力を持つ者が現れる!」
突然、カンカンカンと木槌を打つ音が木霊した。
すると両脇の男性は静まる。
中央の男性が両脇に目配せすると、口を開いた。
「我々の未来は彼一人に掛かっている事実は受け入れる他あるまい。」
そして、大きく深呼吸した。
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