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第18話
初日から、転入生は不思議なオーラを放っていた。
あの艶やかな黒髪は、遠目からでも彼女だと直ぐに認識できた。
大礼拝堂で全校生徒が集まっている中でも、僕は聖歌隊席から彼女を見つけ出していた。
彼女を遠目から見ていると、みゆきに隣から小突かれる。
「あの転入生すっごいね。あんな人混みの中でも、一発で見つけちゃった。」
僕はこくりと頷いた。
「おーしは、あーいうタイプが好みなの?」
僕はぎくりとして、みゆきの方を振り返る。
「え、なんで?」
動揺して咄嗟に質問を質問で返してしまう。
「ふーん。そっかぁ。わっかりやすいなぁー。」
みゆきはふふふっと、擽るような声で笑う。
「応援してあげる!」
僕は恥ずかしくなって、何も答えずに慌てて聖書をペラペラと捲った。
お昼休みには、坂口さんの周りには数人の人集りが出来るようになっていた。
僕はただ、それをぼんやりと眺めた。
放課後になると、いつものようにみゆきが駆け寄って来る。
「おーし、一緒いこっ!」
「うん。」
と返事をして振り返ると、みゆきの直ぐ横に坂口さんが立っている。
「あと坂口さんも一緒に!さっき鏡花から坂口さんが聖歌隊に入部したがってるって聞かされてさ。」
「よろしくお願いします。」
坂口さんはそう言うと、薄紅色の笑みを浮かべた。
部室では、まず坂口さんが紹介された。
部長が話す時は大抵皆静まるけれど、今回は余計静まり返っているように感じた。
気のせいかな。
簡単な紹介が終わると坂口さんはソプラノパートに配属された。
いつもの流れで一通りの賛美歌を歌い、パート毎に分かれての練習が終わった頃、時刻は6時を過ぎていた。
僕はみゆきと一緒にいつもの家路につく。
他愛無い話をしてた筈だけど、僕の頭の中ではずっと、雲の上の澄んだ空で響き渡るようなソプラノの歌声が流れていた。
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