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第25話

その日を境に、僕は毎日毎日、先生と保健室で身体を重ね合わせる夢を見続けた。 時に激しく、時に優しく、僕は先生に求められ続ける。 夢の中の先生は、僕の知っている太宰先生とは全く違っていた。 自信なく、上ずる声で僕の名前を呼ぶ先生は、何処か寂しそうで悲しそうでいて。 うわ言のように、ただただ僕の事を好きだ好きだと繰り返し続けるのだった。 そして決まって夢の最後になると、僕は先生に好きだと伝える。 すると、真っ赤に泣きはらした顔の先生が、僕に微笑んだ。 そんな夢を見た後は、飛び起きると必ず僕の体は汗だくだった。 そして、布団を剥ぐと僕の身体が脈を打っているせいで、毎回下着をドロドロに汚していた。 毎日毎日、見飽きる程同じ夢を繰り返す。 そして、呆れるほど大量に、白濁とした液体を吹き出した。 僕は怖くなり、学校では出来るだけ太宰先生に会わないように、見つからないように身を隠しながら過ごした。 そのせいか、睡眠不足と疲労感が溜まり、徐々に憔悴していった。 「おーし、最近また元気なくない?なんか疲れてる?」 朝の礼拝後、みゆきに声を掛けられた。 なんて説明すればいいのか戸惑い、僕は曖昧に言葉を濁す。 「そうかな?そうでもないよ。」 「そうかなー。なんか最近歌声に淀みがある気がする。」 鋭いみゆきは誤魔化せそうになかった。 「絶対疲れてる。眠そうだし、ちゃんと睡眠とってる??」 僕はギクリとして、咄嗟に言い訳を考えた。 「悪い。見たいアニメと映画が溜まってて、徹夜で観てました。」 「なにぃ?こらー!ちゃんと寝なさいっ!!」 一連の会話を隣で聞いてたあんも、頬をぷくっと膨らましている。 「おうし、寝なきゃ駄目ですよ。」 「ごめんごめん。今日はちゃんと寝るから!」 僕はヘラヘラと平謝りをした。 二人とも、最初こそ怒っていたものの、しょーがないなーと言葉をつなげた。 そしてみゆきが、ぽんっと、何かを思いついたように手を打つ。 「そういえばさ!私この間映画見に行ったんだけど、それがすっごく面白かったのよ!」 みゆきは目をキラキラさせながら語る。 「海賊船長物語の続編シリーズなんだけど、二人はもう見た??」 僕は、いいや?と返答する。隣にいるあんも首をふるふると横に振った。 「え、なんで?二人共まだ観てないの?!じゃあさ、今度の日曜にでも二人で映画見てきなよっ。そしたらみんなで映画の話が出来るしね!」 僕とあんは、揃って顔を見合わせる。 「僕はいいけど、あんは予定空いてるの?」 あんは、あっちの方を暫く見ながら、うーんと言うとこちらに向き直った。 「空いてます。」 「じゃあ、決まり、決まりっ!月曜になるの楽しみだなー。」 みゆきは一人楽しそうにしながら、ルンルンと、先に教室に戻ってしまった。 僕はあんを見ると、あんは既にこちらを見ていて頬を真っ赤に染めていた。 それから、僕の視線に気づくと慌てた様子で顔を隠してしまった。 そして、ぽそぽそと呟く。 「デート・・・ですね。何時に映画館、行きます・・・か?」 この時になってやっと、僕はデートだという事に気付いた。 照れるあんは可愛いなと思った。

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