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第33話

僕が眠りから覚めると、時刻は12時半を過ぎたところだった。 そんなに長く寝ていた訳でも無さそうで、ほっと胸を撫で下ろす。 体調も、絶好調とは言えないが、ベッドから起きだして動く事が出来る程度に回復していた。 だけど、一番驚いたのはそこじゃなかった。 僕が目を覚ますと、隣に先生の顔があったのだ。 薄っすらと睫毛を瞬かせながら、僕の事をじっと見つめている。 「王子、起きたの?」 僕が声を出せずにいると、先に先生に尋ねられた。 「お、きまし、た。何でそんな、近いんですか。」 僕がたじろぐと、先生は僕の胸の辺りに視線を落とした。 「ごめんね。動けなくなっちゃって。」 そう言うと頭を撫でてくる。 動けない?? 僕は先生の視線の先を確認する。 僕は先生の腕を両手で抱き竦めていた。 しかも、かなりしっかりと。 指まで絡ませながら。 「すみませっ。」 慌てて僕は、振り解こうと手を窄める。 しかし、その手を逆に先生に捕まえられて、しっかりと指を絡ませ直されてしまった。 「・・・っえ。っあ。」 言葉が上手く出てこずに、変な声が喉の奥から飛び出してくる。 僕は身体中の血が、顔に集中してくるのを感じた。 なんだこれ。 恥ずかし過ぎる。 なす術なく身を固めていると、今度は肩を抱き込まれ、僕の顔は先生の首筋から胸の辺りに引き寄せられてしまった。 頭上から声がする。 「こうしていて、安心出来るなら、遠慮せずにずっとこうしていなさい。」 至近距離で先生の声を聞かされ、今にも僕はのぼせそうだった。 鼻先に先生の温もりを感じる。 この匂い。 美味しそうな鎖骨。 僕の喉が鳴った。 すんすんと鼻を擦り寄せ、自由になる左手で、先生の首から胸にかけて撫で回していた。 頭上から荒い息遣いが聞こえてくる。 くぐもったその声に余計刺激されて、僕は舌を出すと舐め回し始めた。 ぺちゃぺちゃと音を立てる度に、頭上で呻き声が聞こえた。 なんて美味しそうな、我慢出来ない、食べた・・・い? 食べたい? 何を? 僕は何を食べようとしてる? 僕はわずかに残る理性をフル稼動させ、本能から無理矢理引き剥がそうとした。 その時、保健室の窓ガラスがバンと音を立てる。 先生ははっとして、僕から身体を離した。 「カラスかもしれない。少し待ってて。」 僕はそのまま、こくりと頷いた。 先生は窓まで駆けて行くと、勢い良く開け放った。 僕はホッとしていた。 あのまま、先生に抱き竦められていたら、きっと絶対に噛り付いていた。 情けなさと恐怖心で身震いする。 こんなにも先生の体温を欲しがるようになるなんてまるで思わなかった。 理性が欲望に蝕まれて行く。 乾いた喉がぐるぐると鳴った。 もう二度と噛みたくなんて無いのに。

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