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第39話

僕は管に繋がれて、保健室のベッドに横になっていた。 その管から先生の血が僕の体に流れ込んでくる。 気持ち悪さも随分と楽になった。 「具合はどう?」 横の椅子に座った先生が尋ねてくる。 「だいぶ良くなりました。有難う御座います。」 この分だと、2日に一度は輸血が必要になりそうだ。 そんな体力、先生にあるのだろうか。 先生は呑気にしているように見えるけど、状況は良くなかった。 特に今日は、先生の血を無駄に啜ってしまった。 見た目に平気そうにしていても、本当はダメージがでかいに違いない。 だけど、その事については絶対に責めるような事は言っては来なかった。 本能的に俺の血を求めていたのだから当然だよ、と笑っていた。 本来は、吸血鬼同士の吸血は毒があるから出来ないのだそうだ。 今の僕の体のように他人の血が混じると仇をなすのと一緒で、吸血鬼の血を吸うと中毒を起こし死に至る。 何故僕が先生の血を吸っても平気だったのかは、先生の血は僕の血だから。 まぁ、言わずもがなってところかな。 血の盟約を介した事による利点の1つだ。 ちなみに、血の盟約をしていなければ、親子間でも吸血すれば毒になる。 だから、かなり特殊なケースだろう。 そんな便利なものなのに、禁忌にされているのは、あまりにリスクが高いからだった。 血の盟約を結ぶ相手の心臓を、一度取り出し念入りに啜り清める必要があるからだ。 吸血鬼の血の力により、高い治癒能力が備わると言っても、再び心臓が動き出すことが無い事も少なく無く、禁忌とされたのだそうだ。 僕は、たまたま運良く生き残ったに過ぎない。 僕のケースは寧ろレアケースに他ならない。 そんな禁忌を犯せば、元老院が黙っている訳もなく当然呼び出された。 それでも呼び出されるのがあんなにも早かったのは、きっとネコの密告があったからなのだろう。 本来ならここで死刑を宣告されるのだが、先生は上手い事、切り抜けてしまった。 お陰で元老院のメンツは丸潰れだ。 そうなると、何としてもメンツを取り戻したい元老院としては、僕の暗殺計画を立てるのも至極当然の成り行きだった。 僕を亡き者にしてしまえば、そもそも血の盟約など無かったと、人間に見られたから始末したに過ぎないと、そういうでっち上げの大義名分で処理するつもりなのは明白だった。 要するに、吸血鬼のお偉いさんに僕の命が狙われている状況なのである。 だから、迂闊に助けを求める訳にもいかなかった。 今の僕にとって唯一の味方と言えるのは先生ただ一人だけだった。

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