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第40話 カラスによる福音書3
カラスのはなし3
俺様は今日もダザイから、白い液体の入った試験管を受け取りに、いつもの枝に留まり部屋の様子を見ていた。
天気も良く快晴で、夏の太陽を反射している俺様はキラキラと輝く。
眩しいだろう?
スターはいつでも光を捕らえて逃がさないものなのさ!
そんな絶好調なはずの俺様だが、ひとつ気がかりな事がある。
ここ最近ダザイの様子が変なのだ。
先日、一週間以上ネコを見かける事がなくて変だ、とダザイに伝えてから様子がどうもおかしかった。
そして前回は試験管をもらえず、仕事を失敗したのだ。
だが、俺様は今日こそ任務をこなさなければならない。
全てはろーすとびーふの為に!
何者にもダザイの邪魔をされぬように見張っててやるのだ!
いつものように小さい箱にダザイが入っていくのを見届ける。
暫くしてダザイが窓から顔を出すのを確認すると、俺様は飛び上がった。
全てはろーすとびーふの為に!
しかしサッシに留まってみれば、今日もダザイは俺に何も手渡しては来なかった。
「おいこら。また割ったとか言わないだろーな!」
俺様はがなり立てた。
貰えないのは今週二度目だぞ。
フザケンナ。
「体調が優れないんだ。悪いな。研究室にも俺から丁重に謝っておくよ。」
ダザイが力なく言った。
「お前らがビョーキになるなんて知らなかったぞ。病名はなんだ!」
俺様はがなるのを辞めて、ダザイの顔を覗き込んだ。
今にも泣き出しそうなダザイの顔と鉢合わせてバツが悪くなる。
「なんだ。どーした!何処か痛いのか?」
流石の俺様も狼狽えた。
今まで飄々としたダザイの姿しか見た事がなかったから余計だ。
こんなに感情を露わにするなんて俺様は知らなかったぞ。
「痛いな。胸が痛い。」
そう言うと、ダザイは力なく笑った。
「何が原因か分かっているなら、さっさと治しやがれ。」
でないと俺様のろーすとびーふもお預けじゃないか!!
それは困る!
「特効薬は無いんだよ。ゆっくり、時間をかけて治すしか無いんだろうね。」
まじか。
俺様は愕然とした。
愛しいろーすとびーふちゃんの姿が目に浮かぶ。
思い浮かべれば浮かべるほど、食べてやれない悔しさで泣きたくなる。
「暫く会えないのは辛いぞ。」
俺様が呟くと、ダザイは目を丸くした後、そうだねと言った。
俺様は仕方なく研究室に向かって飛び立った。
ダザイにも泣くほど食べたいモノがあったんだろうか?
そんな美味いものなら俺様も食べてみたいぞ。
だけど、それが何なのか聞くのを忘れたなぁ。
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