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第47話
僕の体はじっとりと嫌な汗をかいていた。
先生が、あんと、する・・・?
僕はどんな顔をして、それを受け入れればいいと言うのか。
僕の頭は真っ白になった。
隣にいるあんが、縋るような視線を僕に送ってくる。
だけど、もう僕にはどうする事も出来なかった。
僕はあんから顔を背けてしまった。
先生の低い声がする。
「生かされたければ条件を飲んで貰うしかない。無理なら君には安らかに逝って貰う事になる。」
「・・・わかりました。」
あんのか細い声が僕の背中から聞こえた。
僕は保健室から逃げ出してしまいたかった。
だけど、足が地面にぴったりとくっついて離れない。
見たくないし、知りたくないし、聞きたくない。
だけど逃げても、結局後で保健室で何が行われていたのかと思い返しては苦悩する事になる。
僕はぎゅっと拳を握り、カーテンを睨みつける事しか出来なかった。
「始めるぞ。」
先生の低い声が聞こえた。
暫く沈黙が続くと、シーツが擦れる音がする。
僕は、あんが受け入れたのだと悟った。
背後から布ずれの音がする。
パチンと金属のホックを外すような音が響き渡る。
僕はじっと目を瞑り、腕に力を込めた。
くちゅくちゅと、唾液を啜るような音が保健室に木霊してゆく。
「・・・っん、・・・ぁ。」
あんのか細い卑猥な声が耳に届く。
その声をかき消すように、くちゅくちゅと啜り上げる音が耳まで届く。
絶え間なく、シーツが擦れ合う音と、ぴちゃぴちゃくちゅくちゅと、卑猥な音が混じり合い響いていく。
乱れていく呼吸が徐々に大きくなる。
僕は、耳が熱くなっていくのを感じていた。
そして、僕は僕が徐々に反応していくのをどうする事も出来ずにいた。
情けない上に、惨めで最低だった。
好きな女の子が僕じゃない男に抱かれているのを助けてやれない上に、性的興奮を覚えるなんて。
僕はキツく唇を噛み締めた。
だけど体は言う事を聞かず、痛いほどに、ズボンの中で成長していた。
もうこれ以上は精神的に耐えられる気がしない。
そう思った瞬間、石のようだった体は空気のように軽くなり、先生とあんの間に無理くり割り込んでいた。
「・・・もうやめて下さいっ。」
僕は必死に訴えた。
先生を力尽くであんから引き剥がす。
突然の僕の反抗に、先生はびっくりして目を丸くしている。
「辞めるって、ほっといたら彼女は・・・」
先生は何か言い掛けようとして言葉を切った。
再び口が開かれると、代々案を僕に提案してくる。
「わかった。じゃぁ王子がやりなさい。」
「えっ。」
「何も最初から俺である必要は無かったんだ。血を啜るのに慣れてるから俺が引き受けただけで、王子がやっても問題ないよ。」
先生はそう言うとベッドから降りた。
パンパンと叩いて服の皺を正す。
僕は先生のその姿を見て安堵した。
先生の身なりに乱れているところは何処にも無かったのだ。
疑問に思ったけど、ただただ安堵した。
あんの方に向き直ると、多少衣服が乱れてはだけているものの、首筋以外の肌の露出は何処にも無かった。
僕は再び先生を見る。
「おいおい。時間が無いぞ。やるなら早くやりなさい。何も必ず最後までやる必要は無いんだよ。相手が性的興奮を覚え快感を感じればそれでいいんだ。まぁ、最後までやっても一向に構わないんだが、結局相手の記憶がなくなる事に変わりは無いからね。自分でどうするか判断しなさい。」
ちらりとあんを見る。
あんは目を伏せたままで、ほほを紅潮させている。
僕は再び先生を見た。
「あの、恥ずかしい・・・んですが。」
すると、先生は溜息をついた。
「気持ちは分かるけど、今回は遊びじゃ無いんだよ。何かあっては困るから俺はここで最後まで見届けるよ。分かったらさっさと始めなさい。」
先生は腕を組んでこちらを見下ろした。
僕はあんに向き直ると、首筋に顔を沈めた。
「怖い思いさせてごめんね。」
僕は精一杯謝った。
あんは微かに首を横に振る。
僕はあんの頭を撫でる。
小刻みに震えるあんの頬に唇を落とした。
先生が僕にしていたように。
両手をあんのそれぞれの指に絡めてゆく。
僕の耳元にあんの熱い吐息を感じる。
首筋に舌を這わせ、耳を絡め取っていく。
あんの呼吸は尚一層乱れていった。
だけど、僕は思いの外冷静だった。
僕は、僕自身が先生にされた事を反芻しながら、気持ち良いと思われる事を一通り試していく。
僕が舌を這わせ、甘噛みし、指を踊らせると、あんはそれに反応し、呼吸を乱れさせてゆく。
そして、僕は気付いてしまった。
僕の体は静かにひっそりと落ち着きを取り戻している事に。
さっきまで痛い程にズボンの中で跳ね上がっていた僕のそれは、今や余裕の表情でいる。
僕は僕が信じられなかった。
頻りに舌を這わせていく。
あんのくぐもった声が聞こえても、もはや僕のそれは何の反応も示さない。
僕は、あんから顔を離した。
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