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第52話
気付けば僕は耳まで熱くなっていた。
からかわれた所為なのか?恥ずかしかった所為なのか?
きっと、多分、どっちも。
ちょっとだけ、僕も身を乗り出す。
「今悩んでる事があるんです。参考にしようと思って質問させて貰ったんですが、揶揄うなんてヒドいじゃないですか。」
先生は、ニタニタと僕を見つめるとへぇと意味ありげな返事を返す。
「なに?恋愛の悩みなの?」
先生は、とても楽しそうにニタニタと聞いてくる。
「・・・だったらいけませんか。」
僕はすっかり意気消沈してしまった。
もう少し真面目に聞いてくれると思ってたのに、こんなに揶揄われるなんて、やっぱりやめておけば良かったかな、と心の中で呟く。
「彼女と喧嘩でもしたの?」
相変わらず楽しそうに質問してくる。
僕はむっつりとした表情のまま返事を返した。
「いいえ、違います。至って順調です。」
「へぇ。良かったじゃない。順調なのに何をそんなに悩む事があるの。」
「それは・・・。」
僕は何て答えればいいのか言葉に詰まってしまった。
先生の事が好きかどうか分からないけれど、体が反応して悩んでます、なんてそんな変態な事聞けるわけない!
僕が押し黙っていると先生が口を開いた。
「まぁ、色々あるよな。悩むのも恋の醍醐味だからいいんじゃないの?」
そして更に付け足した。
「でも、悩むのが嫌で困ってるなら、何か行動に移してみれば?意外となんとかなるもんよ。どうするか決めるのは自分だけどね。」
先生は口元に手を当てながら、相変わらずニタニタと顔を緩めていた。
「先生は自分が同性を好きだって認識した時、どうやってそれを乗り越えたんですか?」
僕は常々気になっていたことを質問する。
そういえば、先生が僕にカミングアウトした時、何も恥ずかしそうでもなく堂々としていた。
「別に乗り越えてないけど。」
「えっ?」
「受け入れただけ。それも自分だってね。他に質問は?」
僕は暫く考えていた。
乗り越えるんじゃなくて受け入れるのか。
似ているようで、それは違った意味の言葉だった。
「先生、試してみたい事があるんです。協力して貰えますか?」
僕は意を決して聞いてみた。
先生はそれをあっさりと肯定する。
「いいよ。」
先生の了承を皮切りに、僕は先生との距離を詰めていった。
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