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第55話 カラスによる福音書5
カラスのはなし5
俺様は急に忙しくなっていた。
ダザイから血液の入った二本の試験管を受け取った日から、毎日毎日、ダザイのところと研究所を行ったり来たり往復する日が続いていた。
いくらタフな俺様とはいえ、休み無しで毎日往復を繰り返すのは骨の折れる作業に変わりはない。
俺様は伝書鳩じゃねえええ!
人間界には、すまほっていう、便利なものがあるらしいじゃないか。
吸血鬼界にも導入して欲しい。
ろーすとびーふを毎日食べられるのは嬉しいけど、疲労感がパねぇんだよお。
それでこの間ダザイに相談してやったら、俺様の伝言が一番セキュリティが高いからだと言っていた。
俺様ってばそんなに凄いのか!
えっへん!
もっと褒めてくれていいんだぜ。
忙殺されて疲弊している俺様とは裏腹に、ダザイは毎日楽しそうで仕方なかった。
どうも最近よく見かける小さいのの影響を受けていると踏んだ。
あいつが白い部屋に来た後のダザイは決まって機嫌が良い。
それはもう、気持ち悪いほどに。
ニタニタしちゃって、おええ。
なーんて事は言わないんだな、俺様。
俺様は紳士。
今日はダザイから、この間の報酬に磁石とクリップをたっくさん貰ったのだ!
このクリップってのが中々凄い。
一個だけなら地味な癖に、磁石ってのに沢山まとまって、くっくつとキラッキラになるんだぜ。
それはもうキラッキラに!
まるで生きてるみたいなんだ。
俺様に勝るとも劣らないこの輝きっぷりは最高だぜ!
んで、ダザイの顔もこのクリップみたいに、何故かキラッキラなのよ。
気味悪くて、思わず聞いちまった。
「ダザイ、そういえば最近いいことあったんか?」
そしたら、尚一層にまーっとしちゃってさ。
こんなこと言うわけよ。
「教え子がピンチでね。俺の力が必要になったんで助けてるんだけど、俺はそれが嬉しくなっちゃってね。不謹慎だよな。」
柄にもなく、窓枠に肘をついて、遠くを見ながら言うわけよ。
乙女かよって思った。
俺様は紳士だから言わないけど。
「もう長い付き合いだから言うけど、今のオマエが一番いい顔してるじゃねーか。だから、いいんじゃね?」
するとダザイは満足そうに俺様に返事したんだ。
「そうか。」
たった一言だったけど、俺様はやられたなーって思った。
ちくしょー。
今日のキラキラナンバーワンの座は、ダザイ、オマエに譲ってやるよおおおお!
悔しいぜ。
今日も太陽が眩しすぎるなぁ。
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