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第66話

暫く先生の隣で満足するまで気持ちよく微睡んだ後、気になっていたことを尋ねた。 そう、あんのことだ。 「先生、あの後、あんはどうなったんですか?」 僕は天井を見上げながら聞く。 保健室と同じ白い天井。 「あんくんは、後から来た夏目老中に引き取られていったよ。」 「そうですか。」 僕は再び気持ちが騒めくのを感じた。 あんの事は、確かな恋愛感情こそ無かったものの、一緒に過ごした時間そのものを否定する気にはなれなかった。 聖歌隊であんと共に過ごした時間は楽しかった。 夏休みも、みゆきと3人で一緒に遊ぶ予定もあった。 それが全て嘘だったのかと思うと、ぽっかりとそこだけ空虚な気分になる。 「あんはこれからどうなりますか?」 聞いたら後悔しそうだと思いつつ、やはり聞かずにはいられなくて、先生に尋ねた。 先生はごそりと寝返りを打つが、暫く返事が返ってこなかった。 「そうだなぁ、裁判にかけられて裁かれるね。」 僕は生唾を飲んだ。 きっと暫くの沈黙は、罪の重さからくる沈黙なのだと悟る。 言葉にするのに憚られる程の、重み。 それを知って、これ以上詳細を尋ねられないと感じた。 僕はもう一つ聞きたかった事を尋ねる。 「先生、もう一つ質問いいですか?」 「どうぞ。」 「僕、何で生きてるんです?特効薬が完成したんですか?」 そうなのだ。 あれ程の強い毒を盛られて、何故生きてるのか不思議でならなかった。 正直、僕はほんとに死んだと思った。 あんに、血液を打たれた瞬間、全身が痺れていき、感覚が無くなり呼吸もまともに出来なくなった。 普通に考えたら即死だ。 そんな強い毒だったのに、何故僕は生き残る事が出来たのだろう? 「・・・先生?」 あまりにも長い沈黙に、僕は再び声を掛ける。 「・・・あ、あぁ、ちょっと詳しくはまだ話せないけど、解毒薬を摂取させたよ。」 「やっぱりそうなんですね。研究所の開発が進んでいて命拾いしました。」 僕は安堵の溜息を漏らした。 きっと直ぐにカラスが研究所に飛んで行ってワクチンを持って来てくれたに違いない。 「後で研究所とカラスにお礼をしないといけないですね。」 途端に先生はがばっと起きて僕の両手を組み敷くと僕に覆い被さった。 僕はびっくりして、太宰先生の瞳を見つめる。 だけど、先生は僕に目を合わせようとしてくれなかった。 「済まないが、この件でカラスと研究所には触れないでほしい。」 僕は釈然としなかった。 命を救われたのだから、御礼くらい言いたい。 特にカラスとは面識がある。 研究所と学校の往復はきっと骨が折れるだろう。 だから、会ったら絶対御礼を伝えようと思っていた。 「何故ですか?」 僕は先生に問い掛ける。 だけど、先生は一向に目を合わせようとしてくれず、顔をあちらに向けたままだった。 「本当に済まない。時期が来たら必ず教えるからそれまで待っていてほしい。」 僕は再び口を開きかけて、ハッとした。 僕の手に絡めている先生の手が震えている。 それに気付いて、僕は聞くのを辞めた。 理由は分からないけれど、この人は何かに酷く怯えている。 この人は、僕を助ける為に禁忌を犯した人だ。 きっと今回も、僕を助ける為に何かとんでもない事をしたのかもしれない。 そしてそれは、研究所にもカラスにも知られてはいけない事なのかもしれない。 「先生。」 僕は驚かさないようにそっと囁く。 「夏彦先生。」 先生がこちらをチラリと見る。 「僕は先生が好きです。だから、キスしたいです。してもいいですか?」 暫し、先生はぱちぱちと瞬かせると、ふっと笑って僕に唇を重ねた。 僕らは軽く甘いキスをする。 先生の手が緩く解かれると、僕は自由になった手を先生の背中にまわした。 先生を緩くふわりと抱きしめる。 僕は先生が好きだから、

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