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第77話

シャワーから上がると、時計は五時五分を指していた。 先生と一緒にいると、時間の感覚が狂ってしまう。 なんだかあっという間だった。 だいぶ内容は濃かったけど、皆まで言うな。 ・・・言うな。 大事なことなので二回、言いました。 僕は奇跡的に?生き残った僕の服を再び着る。 先生は素っ裸のままスリッパを履き、スタスタと冷蔵庫の前まで行くと、二つのグラスにそれぞれ麦茶を注いだ。 一つはテーブルに置き、一つは自分の口に運ぶ。 麦茶が先生の喉を通過する度に、喉仏が上下に波打った。 僕は突っ込むタイミングを逃してしまい、その光景をじっと眺めてしまう。 先生は麦茶を飲み干すと、僕に飲むように促した。 「ほら、喉乾いたでしょ。干上がる前に飲みなさいね。」 そう言うと、素っ裸のままスタスタと僕の前を素通りする。 それから、寝室に姿を消した。 堂々とし過ぎてて、突っ込む余地が無かった。 っていうか、ちょっとは恥じらってくれませんか。 勿論、僕は釘付けでしたよ。 もう勘弁してください。 僕は先生に言われた通り、テーブルに用意してもらった麦茶を飲み干し、一息ついた。 色々やって、いや、あって体力が底をつきそうな状態になっていた。 こんなにぐったりする予定は無かった。 先生の家に来る事が決まった時から、勿論少しは期待してたけど、まさかこんなになるとは・・・だぁぁっ。 脳内ピンク過ぎて、今日はもう何も考えられません。 僕は大きくひとつ深呼吸すると、グラスを流しで濯いだ。 それから、綺麗に洗い上げ、フキンで磨き食器棚に戻した。 間も無くして先生がスタスタとこちらに戻って来る。 「わっ。」 僕はいきなり先生に羽交い締めにされた。 「なっ、ちょっ、先生?!」 「俺と同じシャンプーの匂いだ。」 そう言うと先生はスンスンと僕の左耳のあたりの匂いを嗅ぎ始める。 ちょっと、まって、まって! 僕、もう体力無いっ! 無理っ! 僕は残りの力を振り絞り、先生を無理矢理引き剥がした。 「先生っ!むりむり無理ムリ、もう無理だからっ、僕、運動部じゃないから、体力の限界。」 すると、先生はきょとんとした顔でこちらを見ている。 あれ? 「何もしないよ。俺に抱き付かれるだけで気持ちよくなっちゃう?」 なんっ・・・。 「えっ、あっ、とにかく駄目です。先生はもう今日は触っちゃ駄目です。」 自分の体が反応している事に自分で気付き、否定も出来ない状態で言葉が詰まってしまった。 だけどここは、出来るだけ距離を保って、出来るだけバレないようにしないと。 先生は残念そうな顔をしてこちらをじっと見つめてくる。 何でそんな顔するんですか。 まるで僕が悪いみたいじゃないですか。 「キスも駄目?」 「はい、多分・・・。」 「そう。」 そう言うと先生は、しゅーんとしてしまった。 明らかに肩をがっかりと落としている。 僕は負けそうになって、だけどここで譲れなかった。 いつ僕の身体が爆発するか、僕だって解らないんだから! そんな先生に僕は尋ねる。 「明日は予定空いてるんですか?」 すると先生は首を振った。 「いや、明日は学校だよ。弓道部と陸上部、それと剣道部とサッカー部があるらしいからね。卓球部もあったかな?運動部が活動する以上は保健室は空けとけないでしょ。あと明日はサンプルを取りにカラスが来るからね。」 先生は淡々と僕に説明した。 でもカラスが来るってことは、それはつまり。 「先生、まだ盗撮なんてしてませんよね?」 先生は僕をチラリと見ると、明後日の方を向いた。 まさか。 「してませんよね?」 「わかった。わかった。全部削除するよ。」 渋々スマホを取り出して、僕の目の前でデータ削除を始めた。 っていうか、なんだこの量は! この人、僕等と同じ赴任一年目だった筈なんだけど、よくもまぁ、こんなに溜め込めたなぁ。 って感心している場合では無い。 過去の事とはいえ、自分の拳がワナワナと震えているのが解った。 「いやあ、まさか、この学校には水泳部が無いって事知らなかったんだよ。しかも、生徒の9割が女子。内定した時には合法DKの裸が拝める!って思って飛び跳ねて喜んだんだけどな。」 なんだこの男。 就職理由が合法DKの裸とは、不謹慎すぎる。 「っていうか、それなら何で男子校に行かなかったんですか。」 「もちろん受けたよ。だけど、全部落ちたんだ。仕方なく私立のミッションスクールの保健師してます。はい、削除完了。」 そう言うと、僕にスマホを手渡し写真一覧を見るように促してくる。 僕はスライドして全ての写真をチェックする。 「先生、これ、何ですか。」 僕は複数の動画を指差した。 「どれ。あ、忘れてた。てへぺろ。」 僕はじっとりとした視線を送る。 懲りて無いな、この人。 「盗撮は犯罪ですよ。」 「悪かった。反省してます。」

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