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第82話

気づくと僕は先生の家に居た。 あの後、トイレから戻っても僕は頭がパニックを起こしていて何も手に付かず、保健室のベッドで寝かせられていた。 それでも一向に回復せず、余りにも放心状態だったせいで、連れ帰って来られたらしい。 僕は先生に言われるまま、僕の頭では何も考る事をしないでいたら、いつの間にか先生の家だった。 時計を見ると午後2時を過ぎた辺りだった。 僕は先生のベッドに寝かされた状態になっている。 先生の家にいることは解ったのに、先生の姿が見えない。 居て当たり前の先生が居ないことに、不安が募る。 先生は今、何処にいるんだろう。 「せんせい、どこ。」 細い声で先生を呼ぶ。 しかし返事をする者は居なく、僕の問いは部屋の隅に消えて行った。 先生が居なかった。 「どこ。」 先生、何処にいますか? 「せんせい。」 僕は再び、先生の姿を探す。 「どこ。」 同じ言葉を独り言のように繰り返した。 先生が居ない。 何処にいますか。 先生。 何処ですか? 僕の心臓がゆっくりと動いている。 そうだった。 先生は僕の中に居る。 僕は自分の右手首に噛み付いた。 痛かった。 ゆっくりじんわり、僕の中に温かなものが広がって来る。 そしてそれは、僕の口内を満たしてゆく。 あ、ぁ、先生の味がする。 あ、ぁ、あの時噛んだ、先生の腕と同じ味。 あ、ぁ。 先生だ。 先生だ。 先生。 「王子っ!!何してる!!」 先生の声がする。 僕は先生を舐め続けた。 「辞めなさいっ!!離しなさいっ!!」 先生が先生を引き剥がそうとしてくる。 やめて。 僕から引き剝がさないて。 僕は一層の力を込めて、噛み付いた。 痛い。 生きてる。 「やめろっ!!!」 僕の頭に何かが直撃した。 その衝撃で僕は咽せて、噛み付いて居たものから顎が剥がされて行く。 「王子っ!!俺はこっちだ!!そっちじゃないっ!!」 先生が僕を見ている。 先生だ。 先生が居る。 先生だ! 「太宰先生。」 僕は呟いた。 「そうだ。俺はこっちだ!こっちを噛みなさい!」 僕の目の前に、少しゴツゴツした白い腕が差し出された。 僕はそれを一瞬だけ確認出来ると、口の中に押し込められた。 「うっ・・・。」 衝撃でズブズブと僕の牙が刺さる。 そして、口の中にさっきと同じ味が広がっていった。 僕は目を閉じて、それを啜る。 先生だ。 先生の味がする。 先生だ。 先生だ。 良かった。 先生は生きている。 良かった。 僕は啜り続けた。 先生を確認する為に。 生きてる事を確認する為に。 良かった。 良かった。 先生だ。 先生だ。 せんせ。 僕が目を開けると、隣で眠ってる先生の顔があった。 良かった。 ちゃんと先生が居る。 だけど、安心すると同時に、僕は痛みで顔を顰めた。 右腕が削がれるように痛い。 自分の腕を持ち上げて確認してみると、腕には包帯が巻かれている。 いつこんな怪我したんだっけ? 再び僕は先生の寝顔を見つめる。 良かった。 僕の好きな人が、僕の隣で寝ている。 良かった。 「先生、大好き。」 僕は寝ている先生にキスをした。 先生が僅かに身動ぎ、目を覚ます。 「先生、大好き。」 僕は夢中でキスをした。 先生を蹂躙していく。 先生が好き過ぎて抑えられない。 好きで好きで、止まらない。 先生が僕の頭を優しく撫でている。 先生、好き。 好き、好き、好き。 大好き。 先生、大好き、大好き。 先生、もっと。 もっと。 もっと。 先生、好き。大好き。 先生。せんせい。 僕は息継ぎをしながら、何度も何度も蹂躙した。 先生が僕を受け入れてくれる。 僕は先生の中を暴れまわる。 暴れて何度も抜き挿しする。 くちゅくちゅと卑猥な音が響く。 気持ち良い。 先生の口の中が気持ち良い。 先生の事が好き過ぎて止められない。 僕は再び睡魔に襲われ始めた。 気持ち良い。 先生、寝ちゃいそう。 気持ちよくて寝ちゃいそう。 僕から力が抜けていくと、先生の唇が離れていった。 途端に僕は覚醒する。 「やだ、行かないでっ。」 僕は叫んでた。 「お願い、何処にも行かないで。お願い。」 「行かないよ。」 先生が優しく僕の頭を撫でる。 先生の腕にも包帯が巻かれている。 どうしたんだろう? 「先生、怪我したんですか?」 僕は尋ねた。 先生は微笑むだけで何も言わない。 僕は自分の腕を見る。 「僕とお揃いですね。」 僕は嬉しくなって、一人はしゃいだ。

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