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第97話
僕があんの頭を撫でてやっていると、あんが話しかけてきた。
「何故、私の事を好きにならないのよ。」
突然の問い掛けに僕は苦笑する。
「何故って、何故だろうね。気づいたら、あんより好きな人が出来てたんだよ。」
僕は再びあんの頭を撫でてやる。
あんは相変わらず、僕の腕に絡みついて離れない。
「私は綺麗でしょう?私を振ったのは、あなたがきっと・・・初めてよ。許せないわ。」
僕はあんの頭を撫でながら答える。
「そうだね。あんは、とても美人だと思う。綺麗だよ。可愛いよ。」
すると顔を上げて、僕をキッと睨みつけた。
「じゃあ、何故よ。私の何がいけないと言うの?」
問い詰められて僕は困ってしまった。
あんは美人で綺麗で、可愛い。
本当にそう思う。
だけど、僕の好きな人は先生なのだ。
何故と聞かれても、簡単に答えられそうにない。
「あんに悪いところなんて無いんだよ。」
僕は困ってしまい、言い淀んだ。
「僕の好きになった人は、うーん、そうだな。別に、あんみたいに可愛いとかでも無いし、美人とかでも無いんだけど、僕が思ってる以上に、僕の事を大切に思ってくれる様な、そんな人なんだ。」
僕はあんの頭を撫でる。
「一緒に居るだけでね。凄く、幸せな気持ちになるんだ。トキメキとか、情熱とか、そういう気持ちばかりじゃ無いけど・・・あの人が居ない世界は、僕はもう考えられないくらい、僕にはあの人が必要で、大切だから。一緒に居るだけで、心の奥、凄く深い所があの人に締め付けられて、苦しくて。やっぱり、どうしても、あの人と一緒に居たいんだよ。あの人の泣く姿は見たく無いんだ。ずっと笑っていて欲しい。僕が居なくなると、あの人泣いちゃうから。多分、愛してるんだと思う。・・・上手く説明出来なくてごめんね。」
ゆっくりと、あんの頭を撫でてゆく。
あんは暫く何も言わずに、僕に撫でられ続ける。
それから、ポツリと呟いた。
「ムカつくわ。」
僕は言葉をかける。
「あんは魅力的だよ。凄く。僕に大切な人が居なかったら、多分そんな風に擦り寄られたらクラっときちゃうよ。」
「何よそれ。慰めにならないわ。惨めなだけよ。」
「そっか、ごめん。」
「謝らないで。余計惨めになるじゃない。太宰くんが羨ましいわ。」
「・・・ふぇっ?!」
僕は固まった。
えっ、なんで。
なんで、バレてるの。
僕一言も誰のことが好きかなんて、言ってないよね?!
すかさず、あんのツッコミが入る。
「馬鹿ね、ハッタリに決まってるじゃない。その反応は図星ね?ほんと馬鹿なんだから。」
あんが、じっとりとした視線を僕に送ってくる。
「全くほんとムカつくわ。男に負けるなんて屈辱よ。」
「ちょ、ちょ、まってまって。あの、この事は元老院には・・・。」
「言わないでくれって?じゃ、私をしっかり匿いなさいよ。尋問されたら、私は奴隷なのだから自分の意思に反して全部喋ることになるわね。」
「わ、解った。頑張ります。」
「なんだか楽しくなってきたわ。」
あんはいつの間にか上機嫌だ。
嫌な予感しかしない。
「折角だから、お互い仲良くしたいじゃない?もっと親睦を深めましょう。そういう事だから、詳しく聞かせてもらおうかしら。太宰くんとのい・い・は・な・し。」
最上級の微笑みと共に、あんは恐ろしい事をのたまった。
これは、あれ。
いわゆる、恋バナ?恋バナを要求されてる?!
齢200歳(推定)にして、女子高生より女子高生してるあんに舌を巻いた。
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