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第115話

「あなた一週間、何してたのよ。」 僕が先生の家に上がり、靴を脱ぎ顔を出すと待ってましたとばかりに、アンに声を掛けられる。 「あぁ、まぁ、ちょっと調べ物を。」 図書室に通っていたのだから、あながち嘘では無いだろう。 けれど、アンはどうにも納得いかない様子で、向こうのソファから、こちらを睨みつけている。 「お土産は?」 「おみやげ?」 僕は荷物を下ろす間も無く、そこに立ち竦んだ。 いや、お土産なんて何も・・・、お菓子ならあるけど・・・。 「ええと、ビスケットなら。」 「お煎餅は?」 「ありませんけど・・・。」 僕が答えると、アンがソファから飛び上がりツカツカと近寄ってくる。 頬をぷっくり膨らませて、僕の前で仁王立ちになると、僕は胸倉を掴まれた。 「一週間も現れなかった癖に、私の好物も持参しないなんて、良い度胸してるじゃない?」 グイグイとTシャツを引っ張られて、僕は前屈みになる。 ちょっとあんまり引っ張らないでほしいんだけど、伸びる。 Tシャツが駄目になるのを恐れて、アンの力に仕方なく身を任せた。 すると、更に引き寄せられてしまい、遂に顔が間近に迫った。 これ以上マズイんですけど。 けれど、顔が衝突することを避けて、僕の耳とアンの耳が互い違いになった。 耳のすぐそこでアンが小声で喋り始める。 「怒ったの?」 柄にもなく、弱々しい声だった。 てっきり、盛大に雷を落とされるのかと身構えていたから拍子抜けする。 突然、どうしたんだろう。 「え、怒ってないよ?」 僕は素直に自分の気持ちを告げた。 アンのことは面倒臭いと思う事はあっても、別に怒る程の事じゃないと思う。 暫く沈黙が流れる。 そして、再びアンが口を開いた。 「悪いとは思ってるのよ。」 「え?何を?」 「だから、聞いちゃったこと、悪いと思ってるって言ってるの。何度も言わせないで頂戴。」 僕が何のことか解らず聞き返すと、少しばかり語気を強めたアンの回答があった。 聞いちゃったって、あの時の? 僕は聞き返すタイミングが遅れてしまい、再び耳元でアンの声がする。 いつもの声音と違い、相変わらず声が弱々しい。 「だからっ、私が居候してるせいで、あなた、此処に来れなくなっちゃったんでしょう?」 「別にアンのせいじゃないよ。気にしないで。」 僕はアンに優しく声を掛ける。 アンが気を使うなんて僕にとっては驚きだった。 彼女が先生の家に居候するようになったのも、半分は僕がそうするように話を進めたからで、彼女が負い目を感じるような事でもないはずだ。 「そんなに僕に来て欲しかったの?」 珍しく気弱になってるので、少し可愛く思えてしまい、余計な事を言ったと思った時には遅かった。 途端に僕はアンに突き飛ばされてしまった。 「思い上がらないで。暇潰しにあなたが丁度良いだけなんだからっ。」 大して、力を込められなかったから倒れることは無かった為に、アンの顔が良く見える。 相変わらず頬をぷっくり膨らませて、ほんのり顔が赤かった。 前々からなんとなく感じていたけれど、アンはあまり素直じゃないと思う。 言葉は多少キツいけど、そんなに悪い子でもない。 勿体無いなぁ。 「なによ?」 僕がじっと見ていると、上目遣いで此方を覗き込まれた。 僕は笑って、思わず頭を撫でる。 「なんだ。会いたいなら、会いたいって言えば良いじゃない。」 「違うわよ!そんなんじゃないって言ってるでしょう?気安く触らないでっ。」 「いっ!」 ・・・直球顔面ビンタは流石に痛い。 鼻血出たかと思った。 けれど、何故だか憎めないんだよなぁ。 今日はいつもより、我儘を聞いてあげようかな、なんて気持ちになる。 多分これは、彼女に対して同情の気持ちがあるからだと思う。 いつから奴隷なのかは知らないけれど、きっと大切に扱われる事が殆ど無かったんだろう。 そう思うと、少しくらいの我儘なら許せてしまう気がする。 多分、先生もそんな風に思ってるんだと思う。 そうじゃ無かったら、とっくに元老院に突き出していると思うし。 いつ迄この缶詰生活が続くのか解らないけれど、彼女の暇潰しに出来るだけ付き合ってあげたい。 って、思っていたのに、午後になる頃にはやっぱり速攻で帰りたくなっていた。 常に可愛くしていてくれよ、ほんとに・・・。 取り敢えず、僕のBL書くのをやめてください! そして、破いたら殺すと言って、大量に溜まった一週間分の原稿を僕に読ませるのもやめて下さい! 感想も強請らないでください! 頼むから! しっかり、ヤバいシーンまで鮮明に書かれてるし、色んな意味で僕が可哀想で、ほんと泣きそう。

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