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第126話
そういえば、僕らはお家デートしか出来ない訳だけれど、やっぱり何処か出かけられないだろうか?
別にお家デートに文句がある訳じゃない。
寧ろ嬉しい事しかない。
アンが居るから、遠慮しないといけない事も確かにあるけれど、アンも気を使ってくれるから、寝室で二人きりになれば幾らでも色んな事が出来てしまう。
僕は凄く嬉しい。
そして幸せ。
だから、不満がある訳じゃない。
そうじゃなくて、もっと他の色んな様々な事も共有出来たらいいのに、と思うのだ。
一緒に色々何かをして、何かを一緒に感じてみたい。
・・・んだけど、リスクもあるし、先生は真面目だし、なかなか難しい。
この間なんて、お泊まりしたいと言ったら、怒られた。
嘘をつくのは良くないし、ご両親に顔向けできなくなるから、だって。
お泊まりなんて、高校生なら普通だろ。
中学生だって、友達の家に泊まりに行ったりするし、小学生も然り。
そりゃ、嘘は良くないのは最もだけど、嘘吐かない高校生なんて何処にも居ないよ。
そんな奴居たら、多分人類じゃない。
隠し事の一つや二つ、普通にあるだろ。
これが高校生同士なら、もっと上手い事やってるんだろうな、と思う。
けれど、僕は相手が先生だから、妙に保護者臭い。
いい意味でも、悪い意味でも。
大切にされているっていうのは、凄くよく伝わるんだけれど、そういう事じゃ無くて、もうちょっと対等で有りたい。
でも、結局先生には逆らえないし、丸め込まれてしまって、アイスを奢られる。
・・・。
アイスに負ける。それってどうなの、自分。
でも逆らえないから、美味しく頂く。
ハーゲンダッツバニラ味美味い。
僕が夢中で食べてると、先生はいつも決まって静かにじっと僕を見てて、ふと視線を上げると、目を細めた先生の顔がこちらを見てるんだ。
それが僕は恥ずかしくって、見なかったことにして、また視線をアイスに戻す。
で、結局、僕がアイスを食べ終わるまで、先生はじっと黙ってずっと僕のこと眺めてるみたいなんだ。
恥ずかしくて、そんなの何度も確認出来ない。
食べてる姿を見られるのって、少し緊張する。
しかも相手は先生だから、更に緊張する。
ハーゲンダッツだから、最初はカチコチだし、スプーンなかなか刺さらないし、食べるのにめっちゃ時間かかる。
その間、ずっと見られてるとか、本当に結構、かなり恥ずかしい。
先生も食べればいいのに食べないしさ。
仕返しに必殺『あーん』攻撃したら、目を細めたままで、めっちゃ嬉しそうにパクって食べるし、逆に僕が恥ずかしくなるからこれは辞めた。
先生のカウンターのほうが上手だった。完全完敗。僕、敗北。
僕は先生の彼氏?彼女?いや、彼氏であってるよね?っていう疑問が頭を過る程、先生の僕に対する扱いは、高校生のソレじゃない。
生きてる年数がまるで違うのだから、当たり前と言われてしまえばそれまでだけれど、先生はやっぱり大人なんだな、って思ってしまう。
それなのに先生は、僕を抱きしめる時は必ず決まって、少し憂いを帯びた目を向ける。
僕は何処にもいかないし、目の前にいて、先生のものの筈なんだけど、熱を帯びた表情の中から、何故か僕は憂虞の色を微かに読み取っていた。
それが何なのかは解らない。
ただ、何となく、対等な関係になれたら、それを除いてあげることが出来そうな、そんな気がしている。
もっと先生の事を知りたい。
その為にも、もっと色々な事を先生と一緒にして、色々を一緒に感じたい。
もっと共有出来る事を増やしたい。
共感じゃない、あくまで共有。
何でも共感し合いたいなんて、いくら僕が先生の事を好きで、先生も僕の事を好きで居てくれても、そんなの無理だ。
当たり前だけれど、僕と先生は全然違う。
全然違うから、僕は先生を好きになる。
全然違うから、一緒に居たくなる。
全然違うから、抱き締めたくなる。
全然違うから、愛しくなる。
だから、共有したくなる。
何かを一緒にしたいんだけど、何が一緒に出来るだろう?
ねぇ、誰か教えて。
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