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第128話
「どうかしら?今回の展開には少し悩んだのよね。あなたと太宰くんのCPで進めてた訳だけど、マンネリしてきちゃって、試しに表先生と松本先生×太宰くんの設定を他所から引っ張ってきてしまったの。でも、同時間軸リバーシブルになってしまうでしょう?そういうのって、やっぱり皆様に受け入れて貰えない傾向が強いのよ。」
「えっ?はぁ。あの、何語喋ってますか。」
僕が初心者という事を忘れて、アンが意見を求めてきた。
いや、僕には全く意見どころか何を喋っているのか全く分かりませんけれど!
それ日本語ですか?
「何言ってるのよ。基本でしょう?教えてあげたばかりじゃない。」
「はぁ・・・僕、受けと攻めしか分かりませんが。」
「だから、太宰くんが、あなたとは攻め、表先生と松本先生の間では受けになって、一つの物語の作品の中で受け攻めが入れ替わってしまう事を時間軸が同じリバーシブルって言うのよ。」
「はぁ・・・、それがなにか・・・?」
「だから、太宰くんが、受けになったり攻めになったり入れ替わってしまうのが苦手な女子が居るってことよ!」
「へええ・・・。」
いつもの事だけど、アンが熱っぽく語って居る。
正直僕にはそんな事どうでも良かった。
っていうか、まず、僕には表先生と松本先生に太宰先生が襲われているっていう設定が鬼畜過ぎるんですけれど。
「へええ、じゃないわ!これは聖戦なのよ。下手をすると死人が出るわ。住み分けはとっても大事なの!」
何言ってるのか全く分からない。
なに?うちのクラスの女子の皆様は、リバーシブル星人と戦争でもしているの?
いつから宇宙戦争始めてリバ星人と戦っているんだよ。
一体何が原因で死ぬんだ。
新手のウイルスかなんかなの?
「うちのクラスの布教は、元々太宰くん受けが始まりなのよ。まぁ、マイナーCPに表先生×松本先生もあったけど、今は誰も書いてないから割愛するわね。つまり、メジャーな太宰くん受けが、あなたが出てきたことにより、別時間軸で別の作品として太宰くん攻めのCPが誕生したのよ。それも、最初は読む人が限られたわ。徐々に人気に火がつき始めたけれど。そこに今度は、わたしが手を加えて、(表先生+松本先生)×太宰くん×あなたというサンドイッチCPにしてしまったの。太宰くん総受け勢と太宰くん総攻め勢の両者に、このCPは殴り込みに行ったようなものなのよ。下手をすると血の海を見ることになる作品になってしまったわ。言い忘れてたけど、CPはカップリングの略だから。流石にそのくらいは分かると思ってたんだけれど、不安になったから伝えておくわ。」
熱弁されすぎて、聞いてるのもたるい。
僕はこれに、真面目に答えないといけないのだろうか?
かなりどうでもいいんだけど・・・。
「っていうか、僕、そもそも受けじゃなくて、攻めだと思うんだけど。」
アンの理論展開に付き合う気のない僕は、整然と自分の意見を述べた。
僕にはかなりどうでも良くて、面倒臭い上に、早く話を終わらせたい一心でしか無い。
ところが、アンは、目をカッと見開いて僕を凝視しているじゃないか。
「あなた、このわたしに喧嘩を売ろうっていうの?」
「え?」
「わたしの作品を読んでおいて、別CPの話をするなんて御法度よ!」
「はい?」
アンが拳を握り締め、僕を睨みつけてカタカタと震えている。
えええ。
どうしてそうなった。
喧嘩?売ったつもりなんて全くないよ。
感想を聞かれたから、僕の素直な気持ちを吐露しただけなのに、何でこの人はこんなに怒っているの?
アンの思考回路が全く解読できません。
誰か解説して下さい。
アンの相手をするのが面倒くさ過ぎる。
早く終わってくれないかな・・・。
「ごめん、何で怒っているのか分からないけれど謝るよ。」
「もう二度と私の前で、あなたは攻めだと言わないで頂戴。話したければ別の同志と話しなさいね。でないと、血の海を見ることになるわ。」
何で血の海になるんだ。
話が飛躍しすぎて全く手に負えない。
けれど、ここは僕が退くしかない。
早く会話を終わらせるんだ。
僕の平穏を取り戻せ。
「わ、わかった。わかったから、もう言わないから、ね。アン、謝るよ。落ち着いて、ね。」
僕の事を話している筈なのに、僕の意見は完全無視どころか敵視されてしまったのは、納得いかない。
けれど、ここは退くしかない。
よく分からないけれど、血の海は回避するに限る。
それにしても、知れば知る程、腐女子とは僕にとっては理解し難い生き物だという事が、よく解った。
僕はもう、何も言わないよ。
だから、頼むから僕に僕のBL読ませるの、辞めてくれないかなぁ・・・。
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