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第131話

先生が僕の隣で唸っている。 僕はチャンスだと思ったんだけれど、やっぱり言うべきじゃ無かったかもしれない。 「本当に止してくれ。君の気持ちは嬉しいけれど、俺はひっそりと生きて行きたい。君が居てくれるなら、俺はそれ以上に望む事は無い。」 「先生・・・。」 僕は、先生の腕の中に収められて、緩くすっぽりと覆われてしまった。 僕はされるがままに、先生の胸に顔を埋めた。 けれど、本当にそれが先生の幸せなのか、僕は考えて居た。 勿論嬉しい。 でも、本当に先生は権力が欲しく無いのだろうか? 同性愛の問題も何とかできるかも知れないし、アンも含む奴隷の問題だって、何とかできるかもしれない。 早期解決が望めるかもしれない。 「あの・・・。」 「なに?」 「いえ・・・。」 言い掛けて、口を塞ぐ。 チャンスかもしれないけれど、先生にとっては負担なのだ。 それを分かって居て進言するのは、矢張り僕がしていい事じゃ無い気がする。 先生がひとつ溜息をついた。 それから、驚くべき事を僕に提案した。 「君が拘るなら、ネコには俺じゃなく、君を推薦する事も出来るが、どうする?」 「はい?!」 先生がとんでも無い事を言い出した。 僕に務まる訳が無い。 「君の力は俺と同等だ。堂々としていればいいよ。」 「えええ、何言ってるんですか?そういう問題じゃ無いですよ。無理ですよ。僕は何も知らないし。」 「案外、新しい風を起こすのに、逆に君のような逸材が必要になるかもしれないよ?それにどうしても知識が必要だというなら、後からネコが幾らでも教育してくれるだろう。」 先生がくつくつと笑い始めた。 ネコに教育して貰うって、あのネコに? お堅いネコ様とマンツーマンなんて、胃がキリキリ刻まれそうだ。 「辞めてください。無理ですから。」 考えただけで吐きそうになる。 先生は、楽しそうにくつくつと笑っている。 笑い事じゃない。 今にも、胃が絞られそうだ。 「冗談だよ。でも、俺の気持ち、少しは解ってくれるかな?」 「すみません。もう言わないです。」 先生が楽しそうに、僕の頭を撫でてゆく。 すみません。もう二度と老中やれだなんて、言わないです。 あのネコと一緒に何時間も過ごすなんて、僕には耐えられない。 アン以上に、小言が凄そうだ。 「まぁ、考え直したらいつでも教えてくれ。代表候補にされた俺の推薦力は並みじゃないぞ。」 先生が皮肉めいて、尚も僕を揶揄ってくる。 そりゃそうでしょうとも。 けれど、僕はいくら待ってもらっても、答えは変わりませんから! 「無理です。やりませんからね。」 僕が困って、半分剥れると、先生は笑いながら尚も僕の頭を楽しそうに撫で付けた。 まぁ、先生が楽しいなら、仕方ない。 少しくらいなら許そう。 「でも、そうだな。老中の席には全く興味は無いが、新しい代表が決まるまで、代表代理をやるのも悪く無いかもしれない。」 「あれ、やってみるんです?」 何処でスイッチが切り替わったのだろうか? 分からないけれど、突然先生がヤル気を出し始めた。 「あくまで、代理ならね。色んな情報が聞き出せるかもしれない。」 「なるほど、名案だと思います。」 「そうと決まれば明日にでもネコと話をつけよう。ちなみに、君にも一枚噛んで貰うことになるから、覚悟しておくようにね。」 「え?」 先生が楽しそうにくつくつと笑っている。 一枚噛む? 嫌な予感しかしない。 「俺が代表代理の間は、君には代表代理補佐をやってもらうよ。いいね?」 「えっ?」 代理の上に補佐って、それどういう役職だよっていう心のツッコミはしまう。 この流れはヤバイ。 面倒臭い事になってきてしまった。 吸血鬼に成り立ての、一介の高校生の僕に、そんな大役務まる訳が無い。 「無理ですよ!いくら代理補佐って言ったってそんな大役僕に出来る訳無いじゃないですか。」 「そう?君がやらないなら、代表代理は出来ないな。折角のチャンスをみすみす棒に振るなんて勿体無いのだろう?君は、世間に堂々と俺との交際を宣言したかったんじゃ無かったのか?もっと自由に恋愛を楽しみたかったのだろう?違うのか?」 「・・・ぐ。」 こ、この人は。 僕が先生に対してさっきまで思っていた事を並べ立ててきた。 これは断りづらい。 悔しい。 「決まりだな。」 先生が楽しそうに笑う。 一体全体、何故にどうして、こんなことになってしまったのか。 僕には不安しかありません。

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