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九月第一週②-② ※※
その日の夕ご飯は、もちろんお魚天国だった。ガーラはフライに、グルクンは姿揚げに、イラブチャーは煮付けと魚汁に、トカジャーは塩と泡盛で煮るマース煮に、ミーバイは豪勢な薄造りにして、宿泊客にも振る舞われた。どれもこれも淡白な味わいの上質な白身で、いくら食べても胃が疲れることはなく、酒も進んだ。
魚料理は普段から夕食によく出るし、島の飲食店でも必ずメニューにあるが、それらと比べても今日の魚は格別に旨い。魚そのものも旨いし、適した調理法によってさらに旨みが増している。からっとした揚げ物や、ふっくらとした煮物はもちろん、刺身はシークヮーサーを一絞りすることによって、爽やかな風味になって旨かった。
汀は、グルクンの唐揚げを殊更旨そうに食べた。頭から尻尾まで丸ごと、骨までバリバリ噛み砕いて、残さずに食い尽くす。その音が耳に心地よかった。「やっぱり、自分で釣った魚が一番だね」なんて分かった風なことを言っていて、俺も全く同意だったが、俺が釣ったわけでもないので黙っておいた。
そんなわけで夕食の時間が長引いたので、ゆんたくはなしになった。汗を流して部屋に戻ると、汀が布団の上で丸くなって眠っていた。口をもぐもぐさせて、夢の中でも何か食べているのだろうか。軽く揺すってみても、起きる気配はない。朝早かったし、一日外にいたので、疲れたのだろう。俺は灯りを消して、同じ布団に横になった。
暗い部屋に、汀の寝息がやけにうるさい。規則正しい呼吸に合わせてゆっくりと胸が上下して、タオルケットとパジャマが擦れる。普通なら気にならない微かな音なのに、どうも気が散って仕方ない。目を閉じると余計に耳につく。
「なぁ、ほんとに寝たのかよ」
小声で話しかけても、やはり返事はない。それでも諦めずにしつこく喋りかけると、汀は、赤ん坊がむずかるような声を上げて、ごろんと寝返りを打った。そしてまた、すやすやと気持ちよさそうな寝息を立て始める。
「……眠いのは分かるんだけどなァ」
大きな声では言えないが、俺は完全にそのつもりだった。昨夜はお預けを喰らったから、今夜こそはと期待していた。汀だってそのつもりだったはずだ。そうでなければ、わざわざ俺の部屋で待っているはずがない。そのつもりで来たのに、睡魔にうっかり負けてしまったというところだろう。
俺は、汀のパジャマのボタンをそっと外した。開けた胸元に手を忍ばせて、タンクトップの隙間から直接肌に触れる。セックス覚えたての中学生みたいな振る舞いだな、と頭の片隅に居座る冷静な自分が嘲笑う。うるさいな、放っておいてくれ。この肌の甘さを知ってしまったが最後、後戻りできる男なんていやしない。
薄い胸だが、極上の触り心地だ。すべすべしていて手に馴染む。薄い胸とは言ったが、むしろこの平べったさが好ましい。平らだからこそ、慎ましやかな乳首がより際立つのだ。些細な刺激で固くなって、俺の掌を楽しませる。
「うー、んん……」
くすぐったいのか、汀は胸を隠すように体を縮こませるが、俺の手を追い出すには至らない。むしろ触りやすくなった。俺は、左右の突起を片手の指先で同時に撫でた。表面を優しく触るだけでつんと尖ってくる、その素直な反応が愛らしい。
しばらく撫でていると、春先の蕾のようにぷくっと膨らんでくる。いやらしくもあり幼気でもあるその膨らみを、くりくりと転がすような手付きでしつこく弄り続けると、汀は、もう堪らないというように腰をくねらせた。
「んーん、ゃっ……」
けれども、瞼はぴくりとも動かない。ふうと息を吹きかけると、びっしりと生えた黒い睫毛がそよそよ揺れた。
「……起きないならさ、分かってんの……?」
自分でもぞっとするくらい、余裕のない声だった。二十余歳の男の声帯から出ていい声じゃない。最早、手前勝手な欲望に歯止めがかからなかった。寝込みを襲う趣味は元々なかったはずなのに、おかしなことだ。
胸を弄(まさぐ)る手はそのままに、パジャマのズボンと下着を下ろした。剥きたての桃のような尻が、タオルケットの中で剥き出しになっていることだろう。目に毒なので、わざわざ捲ったりはしないが。
露わになった尻を掌に包み、俺は感嘆した。若さ漲る素晴らしい弾力。完璧に近い円やかさ。サテンの織物よりも贅沢な滑らかさ。俺は我を忘れて揉みしだいた。汀の目があると、その反応が気になっていまいち没頭できない。本気で嫌がられたり、幻滅されたり失望されたりしたら、俺の繊細なハートは砕けてしまう。
だから、汀の眠っている今が絶好の機会なのだ。普段触れない分、俺の手の形を覚えるまで、思う存分揉みしだいてやろう。こんなことを考えて、自分の変態レベルが着々と上がっている気もするが、欲望に抗えない。抗う必要もない。
「んんーん……っ」
汀がまた、赤ん坊のようにむずかって、身を捩った。少しでも隙間ができるのが切なくて、俺は逃げる体を抱き寄せた。暑いのに、汀の体温は気持ちいい。この温かい体の、最も深層の温度はどれだけなのか知りたい。太陽のような灼熱なのか、海のような温もりなのか、もしくはその両方を兼ね揃えているのだろうか。
俺は、汀の尻のあわいに指を這わせた。まだ誰も踏み入ったことのない処女地だ。雪に埋もれて春を待つ蕾のように固く閉ざして、何人たりとも受け入れないぞという気合を感じる。俺は、もっと奥まで知りたいのを我慢して、表面だけをすりすり撫でた。
汀は、ここではまだ何も感じないらしく、いくら撫でても思わしい反応はない。それよりは、乳首を擦ってやった方がいい反応をする。ということは、こちらはいくらか開発されて、敏感になってきたということだろうか。なんて、スケベ親父のようなことばかり考えてしまう。
大量の血液が流入して横溢しそうなほど張り詰めた己を、俺は汀の太腿に挟み込んだ。亀頭を軽く包んだだけで、溜め息が漏れる。そのまま慎重に腰を進めて、下半身を密着させた。汀の薄い尻が、俺の下腹部とぴったり重なる。縮れた毛が邪魔をして、感触を直に味わえないのがもったいない。
「んんー……」
汀がまた声を上げて、俺は息を潜めた。さっきまで起こそうとしていたくせに、今この瞬間目を覚まされたら困るなんて手前勝手にも程があるが、仕方ないだろう。後ろめたいことをしている自覚は十二分にあるのだ。
俺は、とにかくゆっくりと慎重に腰を揺らした。引いて、押して、引き戻して、また押し込む。激しく動けない分、汀の太腿を強く押さえて圧迫する。所謂素股だ。ほとんどセックスだ。我慢汁がいい具合に仕事をして、滑らかな太腿をさらに滑らかにしてくれる。汀の芽も僅かに上向いて、俺に突かれて露を結ぶ。
寝ている相手に何てことをしているんだ、しかもこいつは中学生なのに。そう思うも、直接的な快感に抗えない。疚しいことをしていると思えば思うほど、腰が速くなる。
汀がむずかって身を捩り、ぎゅうっと太腿を締めた。偶然に決まっているのだが、タイミングがあまりにも良く、いや、悪く、俺は、まだそんなつもりじゃなかったのに、早々と吐精してしまった。不満をぶつけるように、汀の細い体を力いっぱい抱きしめた。
こんがり焼けた小麦色の太腿は、白いものに塗れて照っていた。これがミルクならばさぞ旨いだろうが、残念ながらそうではなく、むしろ腐ったミルクに近いものなので、俺は暗がりでティッシュペーパーを探り当て、粛々と拭き取るだけだ。自慰行為の後のこの虚しさといったら、経験のある者ならきっと理解してくれるだろう。
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