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2.看病

 少年の体型が、細身で小柄な羽白とほとんど同じで助かった。濡れた服の代わりに着せたシャツはぴったりのようだし、この仮眠用ソファの寝心地もそう悪くはなさそうだ。そりゃあ、二階の寝室にあるふかふかのベッドには敵わないけど。 「この人、いったいどこの誰なんだろう」  この辺りでは見ない顔だ。  歳は羽白と同じく、十ハ、九くらいか。  濡れて張り付いた服を脱がせた時、目を疑った。その身体には肩から腹まで斜めに走る、大きな切り傷が赤く滲んでいたからだ。浅いが、傷口からはまだ鮮やかな血がこぼれている。その他にも、普通に生きているだけでは到底負いそうもない痣や傷が、まるで勲章のように誇らしく刻まれていた。  羽白は、丁寧に手当をして包帯を巻く。化膿止めにはトキシコ草の葉が効く。は、毒溜まりという意味だ。毒なのに薬とは面白い名前だ、と学生時代のノートにメモしたっけ。  仕舞ってあった毛布を引っ張り出し、部屋の灯りを落とす。机の上のランプがぼんやりと、少年の整った顔を照らした。床まで垂れた長い赤髪に、透けるような白い肌。よく見れば見るほど、どこか中性的な雰囲気に惹きつけられる。睫毛の下の瞳は、いったいどんな色をしているのか。どんな声で、どんな風に話すのか。 「……い、いやいや。なにジロジロ見てんだか」  慌てて目を逸らし、毛布を掛けてやる。  少年は少し身じろいだあと、ようやく深い眠りに就いたようだった。

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