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前魔王城〜カフェ マジョリカ 2
部屋に入ると、レンさんとユイくんが待ち構えていた。レンさん自らお茶を淹れてくれる。昔、母の店を手伝ってたから上手いんだ。
「お疲れ様。湖畔の城どうだった?」
「うん、最高に綺麗だったよ。前魔王様はやっぱりすごいね。あんなに完璧な景色と調和した城をデザイン出来るなんて。」
「うわぁ!俺、人族の国にいた頃からずっと憧れてたんだ。五日後に行けるのが楽しみ!晴れたらいいんだけど。」
「そうだね。空の青さと湖の青さが相まってすごく綺麗だった。後、夕暮れのピンクも!」
「そっか~そんな最高のシュチュエーションで初体験出来て良かったね。」
「ブハッ!!ユイくん?直球だね?!」
「だってヤラないはずないでしょ?」
「で、大丈夫だったの?コウくん暴走しなかった?」
今度はレンさん。
「・・・僕は次の日ロム先生の仕事があったし、日が変わる前には無視して寝たから。大丈夫じゃなかったのはネルだね。回復魔法かけられながら昼前までずっとだったみたい。」
「「あぁ・・・」」
二人ともすごく同情した目でネルを見てるよ。身に覚えがあるの丸分かりだよっ?
「「コウくんが回復魔法使えなくて助かったね。」」
「本当に切実にそう思うよ。」
「けど、コウジンは回復魔法使えるんでしょ?覚悟しときなよ。」
「うわっ!レンさん、僕そこから目を逸らして現実逃避してたのに?!」
「完全憑依で回復魔法かけられながらだと終わりが見えないからね・・・」
ユイくんが遠い目になってるよっ?!
「う、うん。最初に最中には回復魔法なしって決めておこう・・・」
「コウくんだとちゃんと言う事を聞いてくれそうで羨ましい・・・」
「ホントそれ・・・」
あぁ、前魔王様もシグ様も絶対言う事聞かなさそう。もちろん魔王様も。僕、コウが相手で良かったよ・・・
クーとルーもふにゃふにゃのネルをすごく同情の目で見てるよ。二匹とも分かりすぎるくらい分かっているようで、そっとしておいてくれてるみたい。
「じゃあ、そろそろお開きにしようか?ユイくん、またシグくんに怒られるよ?」
「うわぁ!もうこんな時間か?!俺帰ります。さようならレンさん。じゃあ、リンくんまた明日。」
「うん、僕も帰るよ。レンさん、ユイくんまた明日。」
手を振るレンさんに見送られ、ワープポイントから僕とユイくんはそれぞれ帰った。
家に着くと母が出迎えてくれた。ちょうどカフェもお客さんがいない時間帯だったみたい。
「お帰り、リン。どうだった?」
「ただいま。どうって・・・湖畔の城はすごかったよ。あんな綺麗な景色見た事ない。城と自然が完全にマッチしてるんだ。ロム先生の仕事の方も僕の応急処置で何とかなったから、五日後にきちんと修繕に行くらしいよ。」
「へぇ~噂には聞いてたけどそんなに綺麗なのね?良かったわねぇ、そんな素敵な場所で初体験出来て!」
「ち、ちょっと母さんまで何言ってんのっ??!」
「だってそういう事でしょ?おめでとう。」
「やめて?ホント勘弁して??」
「まぁ、リンは元気そうだし安心したわ。コウくんなら我慢してくれそうだもんね。ネルは・・・大変そうだけど?」
うん、まぁね。
「そっかぁ、リンも大人になったのね。じゃあ、私もそろそろ自分の事を考えてもいいかな?」
「はっ?母さんはいつでも自分がやりたい事をやってるんじゃないの?」
「これでもリンが大人になるまでは、リン一筋で他の男に目もくれずにいたのよ?けど、そろそろ恋愛してもいいかなって思ったの。」
「いいんじゃない?僕も母さんには幸せになってもらいたいし。応援するよ。」
「ホントに?相手がロム先生でも??」
「はぁっっっ???!!!!」
「この前のリンとコウくんの試合後の飲み会で意気投合しちゃったのよ!!今もいい感じだし、いけると思うのよね。
五日後に修繕に行くんだっけ?私も一緒に行っちゃダメかしら??」
「・・・さぁ?一応仕事だし・・・けど、ユイくんとシグ様も一緒に行くって言ってたな・・・?」
「あら?!じゃあ、後一人くらい増えても大丈夫じゃない?ちょっとロム先生に直接聞いてくるわ!!リン、店閉めといてね?」
そう言ってワープポイントに行く母。
うん、僕には止められないよ。僕は店を片付け、閉店の札を扉にかけた。
はぁ、まさかのびっくり展開だよ?!母さんがロム先生に無理強いをしなきゃいいけど・・・
結局、母は五日後に湖畔の城に同行する約束を取り付けて来た。
次の日の授業後にロム先生に「母が無理を言ってすみません。」とあやまると、真っ赤になってあわあわしていたので、まんざらでもないんだと安心した。
レンさんとユイくんにも報告したら、レンさんは頭を抱え、ユイくんは何故か喜んだ。周りの魔族が幸せになるのが嬉しいらしい。いい子だなぁ・・・
夜勤明けに会いに来たコウにも母とロム先生の話をしたら、これまためちゃくちゃ喜んだ。けど、
「じゃあ、五日後はランさんがいないんでしょ?泊まりに来てもいい??」
って、見えない尻尾をブンブン振りながら言ったんだ・・・
ユイくんとの差っ??!!!
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