4 / 7

響也side*3

 悶々とした感情で、楓の事だけを考えながら、長い時間を過ごした。  ちょうど、楓と離れて、十二時間弱。遊びに来てるメンバーは帰ったり新たに来たりと、入れ替わりながらまだ色々残ってたが、さすがに誰も聞いてこなくなっていた。 「……なあ、響也、いつまでそーしてんの? ……マジで、へーき?」  顔を上げて時計を見たオレに、康平が近づいてきてそう言った。 「康平……弁当の持ち帰り、してくれるんだよな?」 「ん。ああ……父さんに頼もうか?」 「二つ、頼んで」 「OK」  「今日はサービスしてやる」という康平の父さんに礼を言って、皆と別れて、店を出た。  ――――……これを、二人で食べれるかどうか。    家に向かって歩く足が、自然と速まってしまう。  今まで、こんなに、気持ちが逸ることは、無かった。  モテたし。気に入った女は、特に何もしなくても、大抵なびくし。  もしなびかないにしても、別に次の相手に行けばいいや位の気持ちしか無かった。  こんな風に――――……。  相手が無理でも、どうしても欲しいと思ったのは、初めて。  でも、もし無理だったとしたら。  楓がオレから逃げることを選んだなら。  それは尊重、しないといけないんだろうと思いながらも。  一人で。  ……オレを待ってろよ。  ――――……祈るような気持ちで、帰路を急いだ。  玄関を開けて。  楓の靴があるのを見て。――――……他に誰の靴もないことを、確認。  迎えに出てきた楓に、一人かと聞いたら。一人だと、言う。  いますぐにでも、抱き寄せたいのを、ぐっとこらえて、持っていた弁当を渡した。  意味が、分かってない訳じゃ、ねえよな?  ――――……一人で待ってることの意味、ちゃんと分かった上で、ここに、居るんだよな?  頭が良いのは、知っているけど。  ――――……こういうのは疎そうだから、心配になった。  一緒に食事をしてる間。  ――――……何度も、視線が絡む。  どちらからともなく外して。  何だかちっとも味のしない食べ物を口に放り込んで、食べ終えた。  勘違いじゃなければ。  ――――……今まで以上に、意識して。  ドキドキしてるように、見える。  じゃあ、ちゃんと、意味が分かってて。  オレのになると、覚悟を決めて、待っていてくれたんだろうか。  オレは、リビングのカーテンを閉めて。  うるさい蝉の音を、少しだけ、遮断した。    楓を呼んだら。  緊張した顔をしながらも。――――……ちゃんと、近づいてくる。  触れるとこまで楓が来たら。  抱き締めて離さない、と決めて。ゆっくり近づいてくる楓を待った。  近づいた楓を、後一歩を待ちきれずに触れて、引き寄せて抱き締めた。 「勘違いじゃねえよな?」  そう聞いたら。  楓から、キスを、してきた。 「……勘違いじゃ、ない……」  少し切なそうに、瞳を細めて、見上げられた瞬間。  もう何もかも、間にあるものは消え去った。  すぐに深く唇を重ねて、楓を抱き締めた。

ともだちにシェアしよう!