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響也side*3
悶々とした感情で、楓の事だけを考えながら、長い時間を過ごした。
ちょうど、楓と離れて、十二時間弱。遊びに来てるメンバーは帰ったり新たに来たりと、入れ替わりながらまだ色々残ってたが、さすがに誰も聞いてこなくなっていた。
「……なあ、響也、いつまでそーしてんの? ……マジで、へーき?」
顔を上げて時計を見たオレに、康平が近づいてきてそう言った。
「康平……弁当の持ち帰り、してくれるんだよな?」
「ん。ああ……父さんに頼もうか?」
「二つ、頼んで」
「OK」
「今日はサービスしてやる」という康平の父さんに礼を言って、皆と別れて、店を出た。
――――……これを、二人で食べれるかどうか。
家に向かって歩く足が、自然と速まってしまう。
今まで、こんなに、気持ちが逸ることは、無かった。
モテたし。気に入った女は、特に何もしなくても、大抵なびくし。
もしなびかないにしても、別に次の相手に行けばいいや位の気持ちしか無かった。
こんな風に――――……。
相手が無理でも、どうしても欲しいと思ったのは、初めて。
でも、もし無理だったとしたら。
楓がオレから逃げることを選んだなら。
それは尊重、しないといけないんだろうと思いながらも。
一人で。
……オレを待ってろよ。
――――……祈るような気持ちで、帰路を急いだ。
玄関を開けて。
楓の靴があるのを見て。――――……他に誰の靴もないことを、確認。
迎えに出てきた楓に、一人かと聞いたら。一人だと、言う。
いますぐにでも、抱き寄せたいのを、ぐっとこらえて、持っていた弁当を渡した。
意味が、分かってない訳じゃ、ねえよな?
――――……一人で待ってることの意味、ちゃんと分かった上で、ここに、居るんだよな?
頭が良いのは、知っているけど。
――――……こういうのは疎そうだから、心配になった。
一緒に食事をしてる間。
――――……何度も、視線が絡む。
どちらからともなく外して。
何だかちっとも味のしない食べ物を口に放り込んで、食べ終えた。
勘違いじゃなければ。
――――……今まで以上に、意識して。
ドキドキしてるように、見える。
じゃあ、ちゃんと、意味が分かってて。
オレのになると、覚悟を決めて、待っていてくれたんだろうか。
オレは、リビングのカーテンを閉めて。
うるさい蝉の音を、少しだけ、遮断した。
楓を呼んだら。
緊張した顔をしながらも。――――……ちゃんと、近づいてくる。
触れるとこまで楓が来たら。
抱き締めて離さない、と決めて。ゆっくり近づいてくる楓を待った。
近づいた楓を、後一歩を待ちきれずに触れて、引き寄せて抱き締めた。
「勘違いじゃねえよな?」
そう聞いたら。
楓から、キスを、してきた。
「……勘違いじゃ、ない……」
少し切なそうに、瞳を細めて、見上げられた瞬間。
もう何もかも、間にあるものは消え去った。
すぐに深く唇を重ねて、楓を抱き締めた。
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