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第26話
「すごく仲良しなんだねえ、三鶴くんと古賀くんは」
さあっと三鶴の顔が青ざめた。画面の中、古賀が三鶴の性器を咥えて頭を上下させている。
「毎日、一緒にいるんだもんね。大親友だね」
百地が、チッと舌打ちした。
「男同士でセックスするやつらを親友なんて呼ぶかよ。変態だろ、ただの」
「百地は明治時代の生まれ? そういう考え方はもう錆びついてるでしょ。恋愛対象が異性じゃなくても、人間は美しいんだよ」
そっぽを向いて、からあくびをしてみせる百地を放っておいて、荒川が動画を早送りする。古賀が三鶴の服を脱がす映像が物凄い速さで流れていく。
映像が止まった。二人が唇を合わせながら性器を擦りつけ合っている。
「気付いてなかったみたいだけど、ここ、せーえきのにおいで臭いんだよね。俺たちの昼寝の邪魔でさ」
佐治は愛想良く三鶴の肩を叩く。
「まあ、においはなんとでもなるから、いいんだけど」
親愛の情を表そうとするかのように三鶴の顔を覗き込む。
「この動画、ものすごく良く撮れてるでしょ。結構いいカメラ使ってるんだよね。俺たちだけで見るのは、もったいないなあ」
佐治の言いたいことが分かり、三鶴は目を見開く。
「動画投稿アプリに投稿しよっか? すごい人気出ると思うよ」
涙目で何度も首を横に振る三鶴を、百地が蔑んだ目で見る。
「自分でも分かってるじゃねえか。男同士のエロ動画なんて、人に見られたらやばいってな」
荒川が無言で動画を早送りする。佐治が百地を笑い飛ばす。
「何言ってんだよ。さんざん女のヤバい動画撮って稼いでるくせに。エロは世界を救うんだよ。知らなかった?」
三鶴の耳元に口を近づけて佐治が囁く。
「きみたちが倉庫でなにしてても、自由だよ。セックスも青春だよね。その青春の輝き、俺たちにも分けてほしいわけ」
三鶴の頬をつんつんと突く。三鶴はのけぞって逃げようとするが、佐治は肩を抱く力を緩めない。
「三鶴くんのイってる姿、そそるんだよね。きっと、動画配信したら、バズると思うんだ」
三鶴にとって性的な姿を地球人に見られようとも大したことではない。今までも何人かの地球人に裸に剥かれたことはある。
だが、古賀にとってこの動画を拡散されることは危機だ。古賀には未来がある。三鶴とは違う、地球で暮らしていくべき人なのだ。
「ね、販売用動画のモデルになってよ」
荒川が次の動画を再生する。古賀と三鶴がもつれあい、精液を吐き出すところが、はっきりと写っている。
「三鶴くんがモデルになってくれたら、顔出しは無しでいいよ。その代わり」
佐治が合図すると、荒川は動画を拡大した。古賀の顔がズームされる。
「お願い聞いてもらえなかったら、悲しくてこっちの動画を間違えて流しちゃうかもしれないなあ。古賀くんと三鶴くんのラブラブエッチ」
三鶴の表情が消え、人形のように動かなくなる。
「ん。同意してくれたね。じゃあ、早速、撮影を始めようか」
佐治は三鶴を壁際に立たせた。物陰からカメラと三脚を運んできて、荒川が撮影準備を始めた。
「ねえ、百地。三鶴くんの服、むりやり脱がすのと、自分で脱いでもらうの、どっちがそそると思う?」
百地は三鶴にアイマスクを付けさせながら答える。
「知らねえよ、ヤロウの裸でも勃つやつに聞けよ」
「そうだね。荒川は、どう思う?」
カメラを覗いている荒川がちらりと視線を上げた。
「自分で脱ぐ方が同意してることの証明になる」
「なるほどお。そういう心遣いも必要だよね。荒川、もう勃起してる?」
荒川はうなずき、三鶴を見つめた。
「良い声出して喘いでくれよ」
目を塞がれた三鶴には、荒川の欲情を含んだ視線は見えないが、下卑た欲望は声に出ていた。
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