13 / 14
第12話
東雲の声に重なるように聞こえた圭の声は、すぐに幻想なのだと思い知らされる。
それでも極限まで昇り詰めた快感に、身体は否応なしに東雲を求めた。
「はぁ……ん、あっ……イくっ……奥、気持ちっ……いい……」
「あぁ、恵の中は……っ……熱くてキツくて気持ちいいよっ……」
真新しかったシーツが捩れ、布擦れの音を響かせる。東雲に揺すられ、喉が枯れるほど喘ぐとキスでそれを封じ込められた。
「んっ……ふっ……」
「恵……」
キスの合間に呼ばれる声は酷く苦しそうで、応えるように舌を絡ませると深いため息と一緒にまた可愛いと言ってくる。
腰を打ちつけながら、今日何度目かの精液が吐き出されると、満足そうに笑いかけられた。完全に恋人同士のやりとりに罪悪感を募らせつつも、腰を押し付け中を締め付けながら俺も精を吐き出した。
「あっ……あっ……い、くっ……」
痙攣する身体を押さえつけるように東雲が体重をかけ、ジムで鍛えた腹筋に精液が付くのも気にせず抱きしめられた。
「……汚いからっ……離して」
「気にしないさ。キミが出したものが汚いはずがない……」
嬉しそうにそう言うと、さりげなく胸を掠めた指先が、腹と腹の間に放たれた精液をすくい取り躊躇なく舐めて見せる。
「甘くて美味いよ。それに、とても厭らしい味がする」
このエロオヤジ……と、喉のここまで出かかったのを飲み込み、東雲を押し退けベッドから這い出た。
「シャワー浴びてきます」
「ちょっと待ちなさい。その足腰では無理だよ」
ベッドから立ち上がろうして、言われた通り俺の足腰は使い物にならないくらい力が入らなかった。
「シャワーなら一緒に行こう。中に出したのも掻き出さないと」
立ち上がり肩を抱かれながらゆっくりと歩き出すと、太ももを生あたたかい液体が流れ出てくる。
「……くそっ」
東雲に聞こえないように悪態を吐くと、力が入らない身体を引きずりながらバスルームのドアを開けた。
結局、シャワーを浴びながら中出しされた精液を掻き出されながらも感じて、東雲を喜ばせることになった。挿れられはしなかったが、たっぷりのキスと必要以上に身体を触られベッドへ戻った時は疲れ果てていた。
「今……何時ですか?」
サイドテーブルに置かれた煙草に手を伸ばし、いつものように一本咥える。一緒に置いてあるライターを引き寄せ、ベッドヘッドに背中を預け煙草に火を付けると息を吸い込み煙を吐き出した。
「二十二時を回ったところだよ。ディナーはルームサービスに切り替えた。食べたくなったら連絡するから」
「いえ、これ吸い終わったら帰ります」
今ならまだ日付が変わる前には家に帰れる。今日も圭が実家に来るとは限らないが、やはり朝帰りはマズい。
咥え煙草のまま半乾きの髪を軽く手ぐしで整え、ベッドの下に脱ぎ散らかされた下着に手を伸ばすと案の定阻止される。そこをなんとか振り切り下着を履くと、未だ全裸の東雲が不満そうにベッドの端に腰掛けた。
「また今度、ゆっくりと……すみません」
サイドテーブルに置かれた小さな灰皿に、短くなった煙草を押し付けながら揉み消す。それから、筋肉がほどよく付いた腕に触れ指先で血管を辿り、そう耳元でしおらしく囁く。指を捕まれ絡ませながら顔をずらした東雲に、今日何度目かのディープなキスをされる。
ともだちにシェアしよう!

