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番外編 ウーリーにもらった媚薬1★

「はー、生き返る……」 「……何か、薫が言うと重みがありますね」  ある日の昼下がり、天候が悪くなってきたので、着手していたインフラ整備が中止になり、僕たちは城に戻って来た。帰る時に雨に降られて、ドロドロになったので温泉に入ろう、ということでエヴァンと二人で入っている。  僕は隣に座るエヴァンを見た。二人で温泉に浸かっているものの、エヴァンはいつものように静かな表情をしている。長い髪をまとめあげたうなじが、少し赤くて色っぽいなと思っていたら、彼は眉間に皺を寄せた。 「……見すぎです」 「ごっ、ごめんなさい……」  結局、エヴァンはタメ口が苦手だと判明し、早々に丁寧語に戻してしまったけれど、仕事仲間とも砕けた話をするようになったので、頭は固くないらしい。僕とも冗談を交わすようになってきて、二人で笑い合うことも増えてきた。 「薫」 「なに? ……っ、んっ……」  振り向きざまにチュッと音を立てて離れた唇は、綺麗な桜色で、もっと吸い付きたい衝動に駆られる。もう一度したい、とエヴァンを見つめると、彼は立ち上がってしまった。何だ、寂しい……。 「出ましょう。ウーリーたちが来ます」  なるほど、そういうことか、と僕も立ち上がる。城の温泉は今は大衆浴場と化していて、解放して誰でも入れるようになっている。もちろん、女湯は別に造り、犯罪行為や、いかがわしい行為が行われないよう、監視されているけれど。 「個人の浴室が欲しいですね……」  エヴァンが呟く。彼は、自分に向けられた視線や、身体についた大きな傷跡を見られるのが嫌なようで、こうして人が少ない時に入ることを習慣にしていた。未来が視えるので、誰かが来るのが分かるのは、こういう時に便利だな、とは思う。 「それも、クリュメエナがもっと豊かになれたら、個人の浴室がつくれるようになるよ」 「……そうですね」  僕はそう言うと、エヴァンは優しい笑みで僕を見下ろした。僕と両想いになってから、この表情よくするようになったなぁ、なんて胸が温かくなる。  やっぱり、綺麗だな……。  そう思って、浴室から出てゆったりとした服に着替えた。案の定、部屋に戻る途中でウーリーに会い、「ありゃ、もう済ましちゃったの?」と残念そうに言われる。 「薫の裸を、貴方に見せたくありませんからね」 「けちー」  口を尖らせるウーリーを、エヴァンはスルーして歩き出した。僕も後を追う。ちょっと、今の俺のもの発言は、恥ずかしいけど嬉しい。  部屋に着くと、エヴァンは僕の肩を抱き、寝室へと連れて行った。その腕には何か力がこもっていて、僕は戸惑う。 「え? まだ寝るには早いよ?」 「あんな熱のこもった目で見つめられて、私が何も感じないとでも?」 「え、ちょっ……」  確かに、綺麗だなと思って見てはいたけど、それ以上のことは思っていないはずだ。けれどエヴァンは僕をベッドに押し倒し、上にのしかかってくる。 「ふぇっ? ほんとにっ?」  今すぐやるのか、と僕はエヴァンを見上げた。僕と初めて身体を繋げて以来、彼は二人きりになる度こういうことをしようとする。  そりゃあ、僕だって初めてあの快楽を知ったあとは頭がそればっかりだったけど。普段物静かな分、なんてムッツリなんだ、と思わなくもない。 「いいことを思い付きました」 「へ……なに……?」  そう言うと、エヴァンは一度僕から離れて、引き出しから瓶を取り出した。それが何か分かって、僕は慌てる。 「え、それってもしかして……っ」 「ウーリーから貰った媚薬……もとい、素直になれる薬です」  いや、全然もといじゃないよね!? はっきり媚薬って言っちゃってるよね!? エヴァンが飲まされた時、すごく苦しそうだったのを思い出して、僕は起き上がってフルフルと首を振った。 「二、三滴でいいそうなので、ちょっと飲んでみましょうか」  そう言って瓶を開け、それを煽って口に含んだエヴァン。ええと、二、三滴ってそんな量だっけ? 瓶も親指ほどの大きさだけど、それにしても多いような。  エヴァンがそのまま歩いてきて、僕の隣に座った。もしかして、それを口移しで飲ませようとかっ?  ぷちゅ、とエヴァンの唇が僕の唇に押し付けられる。僕は抵抗して口を閉じていると、エヴァンの手が僕の胸を撫でた。しかも、的確に一番敏感なところを。 「ふ……っ」  一瞬力が抜けてしまった口に、液体が流れ込んでくる。思ったより量は少なかったようで、僕はそれをあっという間に嚥下してしまった。  それでもエヴァンの口付けは止まらない。柔らかい舌が僕の上顎を撫でて、思わずビクッと肩を震わせた。胸を撫でていた手もそのまま、服の上から爪で引っかかれてる……やばい、気持ちいい……。  おかしいな、エヴァンは僕が初恋の相手で、こういうことをするのも、僕が初めてなはずなのに。どうしてこうも、僕を感じさせるのが上手いんだろう。シリルが相手の時には、こんなに気持ちよくしてもらったこと無かったのに。 「は……、んん……」  エヴァンは唇を離すと、目を細めて「全部飲めましたね」と言う。その桜色の、艶やかな唇が笑っていた。僕はその唇に吸い付きたくなって、彼の首に腕を回す。  エヴァンは僕の腰に両腕を回した。本当に、普段の立ち振る舞いからは想像できない甘さと色気に、僕はドキドキしっぱなしだ。 「ん……、は……ぁ」  再び唇が重なる。エヴァンの容姿は男の僕から見ても綺麗で、薄紫色の瞳は僕を前にした時だけ、欲が乗る。僕の前世ベルや、シリル、ロレットを死なせてしまった罪の意識から、何かを望むことを止めていたエヴァン。元々の身分もあって、自分を抑える癖があるけれど、こうすることができるのも、僕の特権って感じで嬉しい。 「何を考えてます?」 「……ううん」  そう言って僕は膝を擦り合わせた。腰の辺りから熱い何かが、背中を這って上がっていく感じ……ゾクゾクする。これ、媚薬のせい? こんなに早く効くものなの?  エヴァンがくすりと笑った。 「効いてきたようですね」 「ぁ……っ」  ビクン、と僕の身体が震える。心臓がドキドキして、身体が熱い。エヴァンの声にも反応して、じわりと先端から何かが滲み出たのを感じた。それを意識したら、どうしようもなくそこに触れて欲しくて、僕はエヴァンに縋り付く。 「熱い……何これ……っ」  勝手に下からジワジワと漏れる感覚は、あまり気持ちいいものじゃない。僕は自分の服を全部脱いで、エヴァンの服も全部脱がせた。エヴァンは抵抗せずに僕を楽しそうな目で見ているだけで、キスすらしてこようとしない。 「え、エヴァンっ、触って? ねぇ……っ」 「ふふ、ご自分でしてください。……ほら」  エヴァンは僕の手を取ると、僕の股間に持っていった。好きなひとの目の前で自慰をしろというのだ。僕は涙目でエヴァンを見る。触り合いっこならまだしも、一人で興奮している姿を見られるのは恥ずかしい。 「辛いでしょう? 自分でしてるとこ、見せてください」  優しく、穏やかな声で僕を唆すエヴァン。僕は耐えきれず自身を握ると、それだけで腰が動きそうな程の快感が背筋を走った。 「あ、いい物がありますよ」  そう言ってエヴァンは、普段彼が髪に付けている、ヘアオイルを取り出す。それを瓶から直接手や陰茎に掛けられ、甘い香りが漂った。それにクラクラして少し手を動かしてしまうと、ビクッと身体が跳ねる。 「ほら、……どうするのか分かりませんか? 教えて差し上げましょうか?」 「……だ、やだエヴァン。エヴァンに触って欲しい……っ、触ってっ!」 「……仕方ないですね。この手を、……こう、動かすんですよ」 「んぅ……っ」  エヴァンは僕の手を上から握ると、上下に動かした。途端に背筋がゾクゾクして、僕は天井を仰いで息を吐く。それが自分でも恥ずかしくなるほど甘い。  ぬちぬちと、そこから濡れた音がして、僕は下を見た。絶えず先端から溢れる透明な分泌液が、エヴァンの細く、長い指を濡らしてさらに滑りをよくしている。彼の綺麗な手が、僕のを握っているというだけで、興奮して一気に絶頂へと駆け上がっていった。

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